南米ブラジルの広大なアマゾン熱帯雨林の奥地に、日本人が初めて足を踏み入れてから大きな節目を迎えました。ブラジル北部のパラ州トメアスにおいて、2019年09月13日、日本人によるアマゾン地域への移住90周年を祝う盛大な記念式典が開催されています。この記念すべき日に、トメアス文化農業振興協会の柴田一宇シルビオ会長は、今日にいたるまで歴史を紡いできた先人たちや、支えてくれた両国政府への深い感謝を表明しました。
アマゾンへの入植が本格的に始まったのは、今から遡ること90年前の1929年のことです。当時は「カネボウ」として知られた鐘淵紡績が主導し、未開の地での挑戦がスタートしました。トメアスは戦後の移民受け入れにも非常に積極的な土地柄であり、特に1960年代にはコショウ栽培が最盛期を迎えています。当時は約2,000人もの日本人や日系人がこの地に根を下ろし、活気あふれるコミュニティを形成していたと伝えられています。
時代の移り変わりとともに、現在の居住者は約1,000人ほどに減少しましたが、彼らの存在感は依然として圧倒的です。かつてのコショウに代わり、現在はカカオやスーパーフードとして知られるアサイーなどの栽培に注力しており、パラ州の農業経済において欠かせない柱となっています。SNS上でも「地球の裏側で日本の誇りをつないでいる方々に敬意を表したい」といった、移住者の不屈の精神を称える感動の声が数多く寄せられました。
環境を守りながら豊かさを生む「アグロフォレストリー」の可能性
現在、アマゾンの熱帯雨林は過剰な伐採や森林火災という深刻な国際的課題に直面しています。こうした状況下で、トメアスの日系社会が実践している「アグロフォレストリー」が、世界中から熱い視線を浴びているのをご存知でしょうか。これは「農業(Agriculture)」と「林業(Forestry)」を組み合わせた造語で、樹木を植えて森を再生させながら、その樹間で農作物を栽培する、まさに「森をつくる農業」という画期的な手法です。
森林を破壊して農地にするのではなく、多様な植物を共生させることで生態系を守りつつ、農家の安定した収入も確保できるのが最大の特徴と言えるでしょう。この持続可能な取り組みに対し、ネット上では「日本人の知恵がアマゾンの救世主になるかもしれない」「伝統的な開墾から環境共生へシフトした姿勢が素晴らしい」と、ポジティブな反響が広がっています。自然との共生を目指す彼らの姿は、現代の農業が目指すべき一つの完成形かもしれません。
筆者の個人的な見解としては、90年という長い年月の中で、移住者の方々が単に土地を耕すだけでなく、現地の環境に適応しながら「守るべき自然」を見出したことに深い感銘を覚えます。経済発展と環境保護はしばしば対立構造で語られますが、トメアスの成功例は両立が可能であることを証明しています。日本とブラジルの絆が生んだこの「緑の遺産」が、次の100年に向けてさらに発展していくことを願ってやみません。