那覇市の活気あふれる国際通り近くで育ったヴァイオリニスト、大城敦博さんが提唱する「琉球ヴァイオリン」が今、大きな注目を集めています。沖縄音楽といえば「唄」が主役であり、三線などの楽器はその伴奏としての役割が主流でした。しかし、6歳からヴァイオリンに親しんできた大城さんは、独自の「民俗器楽」としての沖縄音楽を模索し続けています。
その活動の原点は、中学生の時におばあさまから投げかけられた一言にありました。お気に入りの沖縄民謡「白浜節」を披露した際、「綺麗だけど、沖縄の曲には聞こえないね」と言われたのです。この言葉が、単に音階をなぞるだけでは表現できない、沖縄音楽特有のニュアンスや情熱を追求する旅の始まりとなりました。
大城さんは、19世紀の超絶技巧ヴァイオリニスト、パガニーニの技法にヒントを得ました。弓で旋律を奏でつつ、左手で他の弦を弾く「ピチカート」という奏法です。これを「てぃんさぐぬ花」に取り入れたところ、三線を思わせる素朴な響きが生まれ、見事に「沖縄の音」へと昇華されました。SNSでも「ヴァイオリンで三線の温もりを感じる」と驚きの声が上がっています。
アイルランド音楽との出会いと、独自の進化
その後、京都での大学時代にロックやポップス、そしてアイルランド音楽と出会ったことが大きな転機となりました。民族音楽の素朴な面白さに触れたことで、過度なアレンジを削ぎ落とし、沖縄本来の響きを大切にするスタイルを確立。2013年には、長年の探求を結実させた待望のファーストアルバムをリリースし、多くのファンの心を掴みました。
さらに表現を広げるため、大城さんは6弦のエレキ・ヴァイオリン「ヴァイパー」を導入しました。この楽器はチェロのような低音から、指笛や太鼓を模した音色まで、一人で多彩な音の層を作り出すことが可能です。自ら改造を施し、澄み渡るような広がりのある音色を追求する姿勢には、職人魂すら感じられます。
2018年には、この「ヴァイパー」のみで構成されたセカンドアルバムを発表しました。コンサート会場では「沖縄の音楽が世界の音楽と並び立つ存在だと誇らしくなった」という感動の声が寄せられています。私自身、伝統を大切にしながらも、新しいテクノロジーを融合させて独自の文化を創出する大城さんの挑戦には、勇気をもらわずにはいられません。
大城さんの視線は、今すでに100年後の未来を見据えています。惜しくも亡くなられたおばあさまに完成形を聴かせることは叶いませんでしたが、楽譜を後世に残し、沖縄生まれのこの音色を絶やさないことが彼の使命です。三線の弦が震えるように、大城さんのヴァイオリンもまた、沖縄の歴史と未来を力強く繋ぎ続けていくことでしょう。
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