2019年09月17日、カザフスタンのヌルスルタンで開催されているレスリング世界選手権において、日本レスリング界に激震と歓喜が同時に走りました。男子グレコローマンスタイル63kg級で悲願の金メダルを獲得した太田忍選手(ALSOK)が、試合後に自身の進退について重大な決断を下したのです。非五輪階級で世界一に登り詰めた彼が視線の先に捉えているのは、来年に控えた東京五輪での金メダルに他なりません。
これまで太田選手は、ライバルである文田健一郎選手と60kg級の代表の座を激しく争ってきました。しかし、同大会で文田選手が東京五輪の代表権を内定させたことを受け、太田選手は階級を上げて67kg級で五輪出場を目指す意向を表明しています。SNS上では「これぞアスリートの魂」「階級変更は過酷だが、太田ならやってくれる」といった熱いエールが飛び交い、彼の不屈の精神に多くのファンが胸を熱くさせているようです。
ここで解説しておきたいのが、彼が戦う「グレコローマンスタイル」という競技特性です。これは下半身への攻撃や防御が禁止され、上半身のみで戦う格闘技であり、相手をダイナミックに投げる技術が最大の魅力と言えるでしょう。また、「非五輪階級」とは世界選手権などでは実施されるものの、オリンピックの種目からは除外されている階級を指します。五輪に出るためには、規定の階級へ体重を調整しなければならない厳しい現実があるのです。
「俺しかできない」有言実行の王者が挑む新たな階級の壁
太田選手は記者団に対し、「東京五輪で金メダルを取るという目標は1ミリも揺らいでいない。その舞台が67kg級になっただけのことだ」と、力強い言葉を遺しています。「俺にしかできない」と言い切るその自信こそが、彼を世界の頂点へ押し上げた原動力なのでしょう。増量に伴うパワー不足やスピードの維持など課題は山積みですが、世界王者という称号を引っ提げて挑む彼の姿は、日本スポーツ界に新たな希望を与えてくれます。
編集者の視点から言わせていただければ、この決断は単なる「敗者復活」ではありません。あえて過酷な道を選び、自らの可能性を証明しようとするプロフェッショナルとしての矜持を感じます。一度掴んだ世界一の座に安住せず、すぐさま次の戦場を見据えるスピード感には感服するばかりです。文田選手という最強のライバルがいたからこそ、太田選手はさらなる高みへと羽ばたこうとしているのではないでしょうか。
2019年09月18日現在の状況を鑑みると、東京五輪に向けた代表争いはさらに熾烈を極めることが予想されます。階級を上げた太田選手が、屈強な海外勢を相手にどのような「忍者レスリング」を披露してくれるのか、期待に胸が膨らみます。私たちは、不可能を可能に変えてきたこの男の挑戦を、最後まで全力で応援し続けたいと思います。日本レスリング界が誇る至宝の次なる一手に、世界中が注目しています。
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