新潟市に拠点を置く管工事のスペシャリスト、カサイが陸上養殖の常識を塗り替える画期的なシステムを開発しました。これまで養殖現場では、職人の長年の勘や経験が頼みの綱とされてきましたが、最新のビッグデータを駆使することで、水質の変化を即座に予測することが可能になります。安定した生産を支えるこの技術は、まさに養殖業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を象徴する出来事といえるでしょう。
2019年09月18日に発表されたこのプロジェクトは、配管工具メーカーのレッキス工業との共同開発により誕生しました。「ウオーターマスター」と名付けられたこのシステムは、2019年11月の発売を予定しています。水槽内に設置された高性能センサーが、酸素濃度や水温、そして水の酸性・アルカリ性を示す指標であるpH(ピーエイチ)など、重要な5つの項目をリアルタイムで休むことなく測定し続けます。
SNS上では「スマホで水質が管理できるのは画期的」「素人でも養殖に挑戦しやすくなる」といった期待の声が寄せられています。管理者はパソコンやスマートフォンを通じて、どこにいても水槽の状態を把握できるため、現場に張り付く必要がありません。レッキス工業が測定と通信を担い、カサイがデータの分析を受け持つという強力なタッグにより、精度の高いモニタリング体制が構築されました。
AIが導き出す予測データと廃校活用の新たな可能性
このシステムの真骨頂は、単なる測定に留まらず「未来を予測する」点にあります。鹿児島県や新潟県で実施された実証実験の膨大なデータを活用し、水質がどのように変化するかを事前に察知できるのです。将来的にはAI(人工知能)を搭載し、それぞれの養殖池が持つ固有のクセを学習させる構想も進んでいます。これにより、個別の環境に最適化された、より緻密な管理が実現するでしょう。
水質の悪化を未然に防げるようになれば、エサを与える量や清掃のタイミング、水替えのスケジュールを正確に調整できます。これは、異常が起きてから対処していた従来の方式に比べ、作業負担を大幅に軽減するものです。1システムで最大20基の水槽を管理できる効率性の高さも魅力で、導入費用は1池あたり約150万円から設定されています。カサイ独自の水質浄化材「オキシデコ」との相乗効果も期待されています。
さらに注目すべきは、この技術を地域活性化に繋げる姿勢です。現在、福島県では統廃合によって使われなくなった廃校の校舎を、陸上養殖の拠点として活用するプロジェクトが検討されています。少子高齢化で増え続ける空きスペースを、最新のIT養殖場へと生まれ変わらせる試みは、地方創生の新たなモデルケースになるはずです。食料安全保障の観点からも、場所を選ばない陸上養殖の価値は高まっています。
矢野経済研究所のデータによれば、陸上養殖の市場規模は2021年度には80億円を突破すると予測されており、まさに急成長の真っ只中にあります。海面養殖と異なり、漁業権の制約を受けず、台風などの天候リスクも回避できる点は、新規参入者にとって大きなアドバンテージです。最先端技術が詰まった「ウオーターマスター」が、日本の食卓と地域経済を支える頼もしい存在になることを私は確信しています。
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