2019年09月20日現在、日本のプロサッカー界にデジタルの力による大きな変革が訪れています。Jリーグは今、膨大な顧客データを分析する「ビッグデータ」を武器に、これまでにない緻密なマーケティングを展開しているのです。Jリーグデジタルの出井宏明社長が語るその戦略は、単なる効率化を超えたファンへの深い愛情に満ちています。
始まりは2014年01月01日まで遡ります。公式サイトの刷新や選手名の検索エンジン最適化(SEO)から着手し、サッカーに関心を持ったファンを離さないための土台作りが進められました。そして2016年には、バラバラだったサービスを「JリーグID」という一つの鍵で統合し、個々のファンの行動を可視化する準備を整えたのです。
SNS上では「自分の観戦スタイルがデータで把握されるのは面白い」「アプリのポイントで友達を誘えるのは嬉しい」といったポジティブな反応が目立ちます。ファンとの絆をデジタルで数値化する試みは、スタジアムへ足を運ぶ熱狂をより確かなものへと変えつつあるようです。データ活用は今、まさに加速の時を迎えています。
特筆すべきは、2019年02月16日に開催された大会での成功例でしょう。データ分析から「マスコットには特定のファン層がいる」という仮説を立て、全マスコットと触れ合える「もふチケ」を販売したところ、瞬く間に完売しました。これは一つのクラブの視点だけでは見えてこなかった、リーグ横断的な新しい市場の発見と言えます。
共創が生み出す「三方よし」のデジタル基盤
Jリーグが目指すのは、リーグとパートナー企業、そしてファンが共に利益を享受する「三方よし」の関係です。チケット購入からスタジアムへの入場、グッズ販売に至るまでのあらゆるフロントサービスがJリーグIDと紐付けられ、ファンの体験価値を向上させるための貴重なデータとして蓄積されています。
ここで重要な役割を果たすのが「DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)」です。これは、インターネット上の行動履歴や自社の顧客データを統合して管理する基盤のことです。これに加え、膨大な情報を分析して意思決定を助ける「BIツール」も導入され、現場の勘に頼らない科学的なアプローチが可能になりました。
私は、この戦略の素晴らしさは「現場主義」にあると考えています。専門知識を持つスタッフが不足しがちな地方の小規模クラブでも運用できるよう、Jリーグが主導して研修講座を開設している点は特筆に値します。単なるシステムの提供に留まらず、人間同士のネットワークを構築する姿勢こそが、組織を動かす原動力なのです。
スタジアムでの無料Wi-Fi整備も、鹿島アントラーズやベガルタ仙台などのホームスタジアムから順次拡大されています。試合中にリアルタイムで動画をチェックしたり、感動をすぐにSNSへ投稿したりできる環境は、現代のファンにとって欠かせないインフラです。今後はすべてのスタジアムでの導入が計画されています。
さらにJリーグは、過去の全試合映像をデジタル化し、1万本を超えるハイライト動画を資産として保有しています。これをファンだけでなく、選手の競技力向上にも役立てるという構想は非常に夢がありますね。サッカーの枠を超え、野球やバスケとも手を取り合い、日本のスポーツ文化を底上げする挑戦から目が離せません。
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