日本の総合商社を牽引する三菱商事において、衝撃的なニュースが飛び込んできました。2019年09月20日、同社はシンガポールにある石油関連の子会社「ペトロダイヤモンド・シンガポール(PDS)」にて、約3億2000万ドル、日本円にして約345億円という途方もない損失が発生する見込みであることを公表したのです。この巨額損失の裏側には、現地の元社員による独断の暴走がありました。
不正に関与したのは、2018年11月に入社した中国籍の元社員です。この人物は主に中国の顧客との原油取引を担当していましたが、2019年01月頃から顧客との契約とは無関係な「デリバティブ取引」を密かに繰り返していました。デリバティブ取引とは、株式や債券、コモディティ(商品)などの原資産から派生した金融商品のことで、少ない資金で大きな利益を狙える反面、予測が外れると損失が急拡大するリスクを孕んでいます。
今回のケースでは、2019年06月から08月にかけて原油相場が激しく乱高下したことが、傷口を広げる決定打となったようです。SNS上では「商社の管理体制はどうなっているのか」「一人の社員がここまで動かせる金額なのか」といった驚きと批判の声が相次いでいます。チェック機能が働かなかったことへの不信感は根強く、大手企業といえど内部統制の難しさを改めて露呈した形と言わざるを得ません。
不正が発覚したのは2019年08月中旬、当該社員が突然欠勤したことがきっかけでした。不審に思った会社側が調査を進めたところ、本来の業務を逸脱した危険な取引の全容が明らかになったのです。事態を重く見たPDSは、2019年09月18日付でこの社員を懲戒解雇処分とし、翌日の2019年09月19日には現地当局へ刑事告訴を完了しました。迅速な法的措置は取られたものの、失われた信頼と資金の大きさは計り知れません。
三菱商事は、この損失を2019年07〜09月期の決算に計上する方針を固めています。同社の2020年03月期通期の純利益予想は6000億円とされており、今回の345億円という数字は、単独で見れば経営を揺るがす致命傷ではないかもしれません。しかし、一社員の独断によって利益の約5%が吹き飛ぶという事実は、株主や投資家にとって見過ごせない懸念材料となるでしょう。
編集者としての視点では、今回の事件は単なる「個人の犯罪」で済まされるべきではないと考えます。デジタル化が進み、海外拠点の取引もリアルタイムで監視できるはずの現代において、約半年もの間、不正が見逃され続けたガバナンスの欠如は深刻です。三菱商事は他のグループ会社で同様の不正がないことを確認済みとしていますが、組織全体で「なぜ防げなかったのか」という教訓を徹底的に共有し、再発防止に努めることが急務です。
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