2019年9月27日現在、私たちの生活に欠かせないインターネット広告が大きな転換期を迎えています。かつては画期的な宣伝手法として歓迎されましたが、最近では過度な追いかけ型広告や不透明な表示が問題視される場面が増えてきました。実際に2019年9月13日には、定期購入を隠した「お試し価格」の表示をめぐり、景品表示法違反の疑いで京都地裁に提訴がなされるという象徴的な事案も発生しています。
さらに規制の波は法的な表示義務だけにとどまりません。公正取引委員会は2019年8月、消費者の同意を得ない個人情報の広告利用を制限する指針案を公表しました。これは巨大プラットフォームが優越的な立場を利用してデータを独占することを防ぐ狙いがあります。ネット広告費がテレビ広告費に肩を並べるほど成長した今、急拡大の歪みが「信頼の欠如」という形で表面化していると言えるでしょう。
数値化の罠と「刈り取り」型広告の限界
2019年9月に鹿児島で開催された「ブランドサミット」では、広告業界のリーダーたちが現在の危機的状況を議論しました。そこで最大の課題として挙げられたのが、ページビュー(PV)を何よりも優先する「PV至上主義」の蔓延です。PVとはウェブページが閲覧された回数のことですが、この数字を追うあまり、消費者の気持ちを置き去りにした広告が溢れてしまったのです。
現在の市場は、購買意欲が高まったユーザーを効率よく捕まえる「刈り取り」に特化しています。しかし、1パーセントにも満たないクリック率を求めて大量の広告を浴びせる手法は、残りの99パーセントの人々に「不快感」を植え付けてしまいました。SNS上でも「しつこい追跡型広告に疲れた」という声が相次いでおり、広告がメディアの体験を阻害する邪魔者扱いされている現状は無視できません。
本来、広告には消費者が気づいていない新しい欲求を掘り起こす「発見」の役割があるはずです。博報堂ケトルの嶋浩一郎氏は、これからのネット広告には「ラジオ的クリエーティブ」が必要だと提言しています。これは、数だけを追うのではなく、熱心なファンとの深い信頼関係を築く手法です。特定の人々に深く刺さるコンテンツこそが、ブランドの真の価値を高める鍵になるでしょう。
「測れない価値」を信じる勇気が未来を創る
成功例として挙げられる「ほぼ日刊イトイ新聞」などは、単なるアクセス数を超えた「熱量」を持つメディアとして確立されています。ここでは、読者が紹介される商品を信頼して購入するという、数値化しにくい「絆」が生まれています。ネスレ日本の野沢英隆氏が語るように、ブランドマネジャーの本質的な役割は、預かったブランドの価値を高めて次世代へ繋ぐことにあるはずです。
私自身、現代の広告には「情緒的な対話」が圧倒的に不足していると感じます。クリック数という冷たい数字だけを追い求める姿勢が、結果としてユーザーの広告嫌いを助長してしまいました。今、広告業界が真に取り組むべきなのは、測定しやすい数値だけに頼ることをやめる勇気です。2019年9月27日の今、消費者の心の機微を想像する力がかつてないほど求められています。
コメント