2019年10月02日、欧州経済に新たな緊張の波が走っています。イタリア政府は9月30日の閣議において、2020年の国内総生産(GDP)に対する財政赤字目標を2.2%に設定することを決定いたしました。これまでの見通しであった2.1%から上方修正され、わずかながら財政状況が悪化する見込みですが、ここには新政権の強い決意が秘められています。SNS上では「増税回避は嬉しいが、EUとの衝突が心配」といった、期待と不安が入り混じった声が数多く寄せられている状況です。
今回の目標設定の背景には、2019年9月に発足したばかりの新政権による「付加価値税」の引き上げ回避という至上命題が存在します。付加価値税とは、日本でいう消費税に相当する間接税のことで、イタリアでは景気冷え込みを防ぐためにこの増税を見送る方針を固めました。2019年の赤字見通しである2.04%からも数値が悪化するため、財政健全化を厳格に求める欧州連合(EU)との間で、再び火花が散るのではないかと専門家の間でも危惧されています。
経済再生への切り札と立ちはだかる「財政規律」の壁
イタリア政府は2019年10月15日までに、2020年度の予算案をEUの執行機関である欧州委員会へ提出する予定です。現在、イタリアの失業率は約10%という高水準に達しており、経済の停滞を打破することが急務となっています。新政権は景気浮揚の目玉策として、増税見送りだけでなく最低賃金制度の導入なども掲げました。不足する財源については、国有資産の売却によって補う検討を進めているようですが、その実効性については慎重な見方も広がっています。
ここで重要となるのが、EUが定める「財政赤字をGDP比3%以内に抑える」という鉄のルールです。イタリアの公的債務残高はGDP比で約132%に達しており、これはユーロ圏内ではギリシャに次ぐワースト2位の数字となります。赤字比率自体は3%以内に収まっているものの、膨大な借金を抱えるイタリアに対し、EU側がさらなる債務削減を優先するよう強く迫る可能性は否定できません。市場では「イタリア国債の信認が揺らげば、再び金利上昇を招く」との警戒感も漂います。
グアルティエリ経済・財務相は「国内経済を刺激する支出とEUルールの均衡点を探る」と述べ、対話による解決を強調しています。EUに懐疑的だった前政権とは異なり、五つ星運動と民主党による連立政権は協調路線を模索している点はポジティブに評価できるでしょう。しかし、コンテ首相が「EUの財政規律には修正が必要だ」と主張している通り、根本的な考え方の相違は依然として残っています。私は、この歩み寄りこそが欧州の結束を占う試金石になると確信しています。
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