2019年10月02日、日本郵政グループが揺れています。傘下のかんぽ生命保険と日本郵便で発覚した保険の不適切販売問題は、これまで築き上げてきた「民営郵政」の看板を大きく傷つける事態となりました。公表された中間報告によれば、過去5年間で疑いのある契約は6300件にものぼり、その規模の大きさに世間では驚きの声が広がっているようです。
今回の問題で特に深刻なのは、顧客に対して虚偽の説明を行うといった保険業法違反や、自らの営業成績を優先するために不要な契約を強いた社内ルール違反が横行していた点でしょう。本来あるべき「顧客本位」の精神が、現場では完全に形骸化していたことが浮き彫りになりました。SNS上でも「郵便局なら安心だと思っていたのに裏切られた」といった、高齢者を中心に広がる悲痛な叫びが目立っています。
事態を重く見た金融庁は、行政処分を視野に入れた立ち入り検査を開始しました。日本郵政の長門正貢社長らグループ3社のトップは記者会見で謝罪し、被害を受けた方々への原状回復と再発防止に努めることで「職責を全うする」と表明しています。しかし、地に落ちた信頼を取り戻すための険しい道のりにおいて、現在の経営陣が組織を牽引する求心力を維持できるかは極めて不透明だと言わざるを得ません。
特に憤りを感じるのは、郵便局に信頼を寄せる高齢者を標的にした一部営業員の悪質な手法です。もちろん個人の倫理観も問われますが、それ以上に、過剰なノルマで現場を追い詰め、実態把握を怠り続けた経営層の責任は極めて重大でしょう。現場の声が届かない風通しの悪さが、このような組織的な不正を助長したのではないでしょうか。私は、この「数字至上主義」の蔓延こそが諸悪の根源であると考えます。
情報遮断とガバナンスの欠如が招いた迷走の果て
驚くべきことに、2018年の春頃からNHKなどの報道で不適切営業の疑いが指摘されていたにもかかわらず、組織としての対応は極めて鈍いものでした。真摯に調査を行うどころか、当初は「一方的な報道である」と抗議を行う始末です。こうした傲慢な姿勢が、自浄作用を妨げる要因になったことは明白でしょう。ガバナンス、すなわち「企業統治」という組織を正しく運営するための仕組みが、全く機能していなかったのです。
持ち株会社である日本郵政に情報が上がり、社外取締役を交えた議論が行われたのは2019年07月になってからのことでした。10月には保険営業を早期に再開しようと目論んだものの、結局は撤回に追い込まれるなど、経営の迷走ぶりは目を覆いたくなる惨状です。グループ3社間の連携は極めて乏しく、40万人という巨大な組織をコントロールする能力が欠如していることを露呈してしまいました。
民間から招かれた経営陣は、組織内ではいわば「外様」のような立場にあり、伝統的な郵政文化との乖離も指摘されています。しかし、民営化を掲げる以上、その複雑な組織形態を言い訳にすることは許されません。強力なリーダーシップと緻密な連携がなければ、この巨大な「沈みゆく巨艦」を立て直すことは不可能でしょう。投資家の信頼も完全に失墜しており、株価の急落という形で市場の厳しい洗礼を受けています。
今後の日本郵政株の売却計画も不透明となり、その収益を東日本大震災の復興財源に充てるという国の方針にも暗雲が垂れ込めています。郵政の社長職は、歴代の就任者が相次いで途中退任に追い込まれるなど、民間経営者が尻込みする「鬼門」と化しているのが現状です。大株主である政府も含め、単なる謝罪に終わらせず、解体的出直しを図る覚悟が今こそ求められているのではないでしょうか。
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