2018年6月15日に施行された住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法が1年を迎えましたが、民泊ビジネスは現状、期待されたほどの伸びを見せていないようです。この状況を打破するための論点はどこにあるのでしょうか。民泊をめぐる規制のあり方について、東京都新宿区の吉住健一区長が「規制の必要性」を訴える一方、大和総研の市川拓也主任研究員は「規制緩和」の必要性を主張しており、両者の意見が対立しています。施行から1年が経過した今、民泊ビジネスの未来を左右する規制、特に自治体による「上乗せ規制」の検証が急務と言えるでしょう。
民泊新法に基づき、各自治体は独自の条例で規制を上乗せすることが可能です。これを「上乗せ規制」と呼びます。現在、東京23区内であってもその規制内容にはばらつきがあり、この点が民泊の普及を妨げる一因になっていると考えられます。市川主任研究員は、施行1年という節目を機に、この上乗せ規制のあり方について検証し、自治体間で情報交換を行う場を設けるべきだと提言されています。多様な意見を共有し、より合理的で実態に即した規制の形を模索することが、市場成長には不可欠なのではないでしょうか。
具体的な規制の緩和策として市川主任研究員が提案されているのは、「住居専用地域」においては「家主不在型」に限り制限を設けるべきという考え方です。民泊運営者が同じ建物内や隣接地に居住している「家主居住型」であれば、トラブル発生時などにもすぐに対応できるため、周辺住民への影響が小さいと考えられます。しかし、運営者が不在となる「家主不在型」の場合、騒音やゴミ出しなどの問題が生じやすくなります。そのため、特に静穏な住環境を守るべき住居専用地域以外では、過度な上乗せ規制は不要ではないかという見解です。実際に杉並区など、こうした方針をとる自治体も存在しています。
民泊市場の健全な育成という観点からは、上乗せ規制はできる限り少ない方が望ましいでしょう。しかし、現実問題として、自治体が自ら規制を緩和するには、議会や住民の理解を得る必要があり、非常に難しいのが現状です。これは、民泊がもたらす経済効果の期待と、住環境の悪化を懸念する住民感情との間に、大きな隔たりがあることを示しています。この難局を打開するためには、国が自治体に対して上乗せ規制の緩和を働きかけるなど、より積極的な役割を果たす必要があると、私個人としても強く感じています。民泊はインバウンド需要の取り込みにも寄与する重要な産業であり、規制の最適化は日本の観光戦略にとっても喫緊の課題だと言えるでしょう。
コメント