私たちの身の回りにある「めっき」や「伸銅品(しんどうひん)」に欠かせない重要金属、亜鉛の国際市場が今、大きな揺れを見せています。2019年10月16日現在、亜鉛の国際価格が約2カ月半ぶりとなる高値水準まで跳ね上がりました。世界的な指標となるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物価格に注目すると、2019年10月14日には1トンあたり2420ドルを記録しています。
この数字は、直近で安値をつけた2019年09月03日と比較すると、わずか1カ月余りで10%も上昇した計算になります。さらに日本時間2019年10月15日の夕刻時点でも2425ドル前後で推移しており、市場の熱気は冷める気配がありません。SNS上でも「素材価格の上昇が製品コストに響くのでは」といった不安の声や、投資家による今後の動向を注視する投稿が目立っています。
供給の「蛇口」が閉まる?ナミビア鉱山の生産停止が引き金に
今回の急騰の背景にあるのは、アフリカのナミビア共和国における供給不安です。イギリスの資源大手ベダンタ・リソーシズが、ナミビアにある「スコーピオン鉱山」の操業を2019年11月から約4カ月間にわたって停止することが明らかになりました。鉱山とは、地中から目的の鉱石を掘り出す現場のことで、ここでの停滞は世界中の亜鉛地金の流通量に直結する死活問題となります。
実際の減産規模そのものは限定的であるとの見方もありますが、マーケットは敏感に反応しました。投資家の間では「ただでさえ足りない亜鉛がさらに手に入りにくくなる」という思惑が先行し、買い注文が膨らんだ形です。こうした心理的な要因が相場を力強く押し上げる結果となりました。一度火がついた需給逼迫(じゅきゅうひっぱく)への懸念は、そう簡単には収まりそうにありません。
ここで言う「需給逼迫」とは、買いたい量に対して売られている量が極端に少ない状態を指します。国際鉛・亜鉛研究会(ILZSG)の調査によれば、2019年の世界全体における亜鉛地金の需給は、約12万トンの供給不足に陥る見通しです。供給が需要に追いつかないという、いわば「品薄状態」が深刻化する恐れがあり、これが価格を下支えする強力な要因となっています。
編集者が見る今後の展望:堅調な値動きはいつまで続くか
専門家からは、当面はこの勢いが衰えないという予測が示されています。みずほ銀行の調査担当者は、不足幅がさらに拡大するリスクを背景に、亜鉛相場はしばらくの間、堅調な推移を維持するだろうと分析しています。私自身の見解としても、新興国のインフラ需要や自動車産業でのめっき需要が根強い中で、供給側のトラブルが重なった今回の事態は、価格高騰の「長期化」を示唆していると感じます。
編集者として感じるのは、こうした資源価格の変動がいかに私たちの日常生活と密接に関わっているかという点です。例えば「伸銅品」とは、銅に亜鉛などを混ぜて板や棒状に加工した合金製品を指し、電子機器や硬貨、楽器など多岐にわたる用途に使われています。素材価格の上昇は、最終的にはメーカーの収益や消費者の手に渡る商品の価格にまで波及しかねないため、決して他人事ではないのです。
今後数カ月間は、スコーピオン鉱山の状況や他の主要鉱山での稼働率、そして中国をはじめとする大消費国の動向から目が離せません。供給不足という「歪み」が解消されるまで、亜鉛市場の緊張感は高いまま維持されるでしょう。ビジネスパーソンであれば、この2019年のメタル市場の波を的確に捉え、コスト管理や投資判断に活かしていくことが求められるに違いありません。
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