電気自動車(EV)の心臓部とも言えるバッテリーが、ついに「意思」を持つ時代がやってきました。車載電池大手のエンビジョンAESCジャパンは、2019年10月18日、人工知能(AI)を駆使した画期的な制御システムの実用化に乗り出すことを明らかにしました。これまでの電池は単なるエネルギーの器に過ぎませんでしたが、これからはAIが自ら最適な充放電を判断し、寿命を最大限に延ばす賢い存在へと進化を遂げるのです。
SNS上では「スマホのバッテリーもこれくらい賢くなってほしい」「中古EVの価格安定につながるかも」といった、実用面でのメリットに期待する声が早くも上がっています。今回のプロジェクトの核心は、センサーから得られる膨大なデータを単なる「監視」に留めず、能動的な「改善」へと繋げる点にあります。バッテリーが自身の状態をリアルタイムで把握し、より長く、より効率的に動けるよう自律的にコントロールを開始します。
クラウドとAIが連携!ドライバーに最適な運転をアドバイス
現在、同社のバッテリーには温度計や電流計といった基本的なセンサーが搭載されており、主に発火などのトラブルを防ぐモニタリングが行われています。新システムではここに「IoT(モノのインターネット)」の技術を融合させます。IoTとは、あらゆるデバイスをネットに接続して情報を共有する仕組みのことです。収集されたデータはクラウド上のAIへと送られ、高度な分析を経て車のコックピットへとフィードバックされます。
例えば、バッテリーに負荷がかかる運転を検知すると、ディスプレイを通じて「急加速は消耗を早めます」といった具体的なアドバイスを提示します。こうした対話型とも言える機能は、ユーザーの環境意識を高めるだけでなく、愛車をより長く大切に乗り続けるためのパートナーとなってくれるでしょう。機械任せにするだけでなく、人間とAIが協力してエコなドライブを実現する姿勢には、非常に現代的な意義を感じます。
「スマートグリッド」で広がる災害に強い街づくり
特筆すべきは、駐車中の充電までもが自動化される点です。リチウムイオン電池は、常に満充電にするよりも80%程度の状態を維持する方が劣化を抑えられるという特性があります。AIがこの加減を完璧に管理することで、将来的な電池交換コストの劇的な削減が期待されます。さらに、次世代の送電網である「スマートグリッド」との連携により、家庭の太陽光パネルと電気を融通し合う未来も現実味を帯びてきました。
深夜の安い電力を選んで蓄え、災害時にはその電気を地域で分け合う。こうした仕組みは、単なる移動手段としての車を超え、社会インフラとしての価値を高めるものです。私は、この技術こそが「動く蓄電池」としてのEVの真価を引き出す鍵になると確信しています。一方で、位置情報や走行データといった個人情報の塊を扱う以上、サイバー攻撃への対策は避けて通れない課題であり、鉄壁のセキュリティ構築が望まれます。
日産のDNAと中国のデータ技術が融合した新たな門出
エンビジョンAESCジャパンの前身は、2007年に設立された日産自動車系のバッテリーメーカーです。世界初の量産型EV「リーフ」を支え、累計8400万個もの供給実績を誇る日本の技術力がベースにあります。2018年に中国のエンビジョングループの傘下となり、2019年4月には新体制として再出発しました。親会社が持つ風力発電の緻密なデータ分析ノウハウが、今回、車載電池の分野に惜しみなく投入されています。
風の動きを読み、効率的に発電する技術が、今度は電池の寿命を延ばすために活用される。この異業種間のシナジー(相乗効果)は、電動化が加速する世界市場において、日本発の技術が再び主導権を握る大きな武器になるはずです。データを制する者が次世代のモビリティを制するという激しい競争の中で、同社がどのような「最適解」を私たちに見せてくれるのか、その一歩一歩に世界中が注目しています。
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