2019年10月13日、東京工業大学の関嶋政和准教授らが発表した革新的な研究成果が、製薬業界に激震を走らせています。人工知能(AI)を駆使して、膨大な化合物の中から医薬品の「卵」となる候補物質を劇的に効率よく選別する新手法が開発されました。この技術は、これまで膨大な時間と資金を投じてきた新薬開発のプロセスを根本から変える可能性を秘めています。
今回注目を集めているのは、独自のAIアルゴリズム「VisINet(ビジネット)」です。これは、薬の候補となる化合物が、体内の標的タンパク質と正しく結合して効果を発揮するかどうかを瞬時に予測するシステムとなっています。SNS上では「新薬が安くなるかもしれない」「日本のAI技術が医療を救う」といった期待の声が続々と上がっており、その注目度の高さが伺えるでしょう。
深層学習が導き出す「結合」の真実
「VisINet」の核となるのは、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる高度なAI技術です。これは人間の脳の神経回路を模したモデルで、コンピューターが自らデータの特徴を学習して判断を下す仕組みを指します。従来のコンピューターシミュレーションと比較して、化合物とタンパク質の結合反応を予測する精度が飛躍的に向上した点は、まさに画期的な進歩と言えるはずです。
実際にがんの原因となるタンパク質「AKT1」を用いた実験では、従来手法に比べて約5倍という驚異的な効率で結合物質を選び出すことに成功しました。特筆すべきは、スーパーコンピューターで一度評価モデルを作成してしまえば、その後の解析は一般的なパソコンでも実行可能という柔軟性です。この利便性は、研究現場のハードルを大きく下げてくれるに違いありません。
さらに、このAIは単に「YES/NO」を判定するだけではなく、化合物のどの部分が結合に寄与しているかを視覚的に示す機能も備えています。これにより、研究者は候補物質をどのように改良すればより強力な薬になるのか、具体的な指針を得られるようになります。単なる自動化を超えた、人間とAIの協調によるクリエイティブな研究が加速していくでしょう。
1000億円の壁を壊すAIの可能性
現代の創薬において、1つの薬を世に送り出すには10年以上の歳月と1000億円を超える巨額の費用が必要だとされています。しかし、苦労して開発を続けても、最終段階で期待した効果が得られず断念するケースが後を絶ちません。こうした「開発中止」のリスクを初期段階で最小限に抑えることは、製薬会社にとって死活問題であり、社会的にも薬価の抑制に繋がる重要な課題なのです。
筆者は、今回の東工大の研究は「医療の民主化」への大きな一歩だと確信しています。AIによる効率化で開発コストが下がれば、これまでは採算が合わずに見捨てられてきた希少疾患の治療薬開発にも光が当たるかもしれません。技術が進化するスピードは凄まじく、私たちが手にする「未来の薬」は、このAIの計算から生まれてくることになるのでしょう。
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