2019年10月12日から13日にかけて、東日本を縦断した記録的な台風19号。その接近を前に、首都圏のスーパーや小売店では、かつてない規模の「事前買いだめ」が発生しました。日経POS(販売時点情報管理)データの分析によれば、特に停電への備えとして、電池やろうそくの販売額が前年の同時期と比較して20倍前後にまで跳ね上がったことが明らかになっています。
POSデータとは、レジでの販売時に「いつ、何が、いくらで売れたか」をリアルタイムで記録する仕組みのことです。この客観的な数字が物語るのは、私たちが想像する以上に、多くの人々が強い危機感を抱いて行動したという事実でしょう。SNS上でも「棚からパンが消えた」「電池がどこにも売っていない」といった悲痛な投稿が相次ぎ、日本中が緊迫した空気に包まれていました。
停電対策が最優先!驚異の販売増を記録した日用品
2019年10月11日の全国平均を調べると、単三のアルカリマンガン電池の販売額は前年比15倍に達しました。特に被害が懸念された首都圏では、11日に22倍、上陸当日の12日には23倍という驚異的な数字を叩き出しています。さらに驚くべきは「仏壇・神棚用ろうそく」の需要です。首都圏では12日に前年比17倍を記録し、明かりを確保しようとする切実な願いがデータに現れました。
トイレットペーパーやベビー用おむつも、前年比で8割から9割増と大きく伸ばしています。実は、2019年10月1日の消費増税直後に買い控えが起きていた時期でしたが、今回の台風がその反動を完全に打ち消す形となりました。命を守るための備えが、家計の節約意識を上回った結果と言えるでしょう。編集者の視点で見れば、増税の影響をこれほど短期間で覆す自然災害の恐ろしさを改めて痛感せずにはいられません。
食料品は「即食性」がキーワード!サバ缶やパンに注文集中
飲食料品の中では、水だけでなく、調理不要で食べられる「即食性」の高い商品が選ばれました。ペットボトルのミネラルウォーターは11日に前年比4倍を超え、缶詰類も爆発的な売れ行きを見せています。特にサバ缶詰やマグロ缶詰は、首都圏で前年比5.6倍から8倍という記録を残しました。断水や停電でキッチンが使えなくなる事態を、多くの人が冷静に予測していた証拠です。
また、主食としてのパンも、食パンよりそのまま食べやすいロールパンやコッペパンが好まれ、2.3倍の売り上げを記録しています。小売側も手をこまねいていたわけではありません。スーパーの「いなげや」では本部主導で多めに発注を行い、ビックカメラやウエルシアHDも電池などの在庫を強化して臨みました。しかし、2019年9月の台風15号の記憶が新しい中、消費者の不安を解消するには至りませんでした。
深夜には棚が空っぽになる店舗が続出し、事前の増産や在庫確保だけでは追いつかない「供給体制の限界」という課題が浮き彫りになりました。災害大国と言われる日本において、未曾有の事態にどう商品を届けるか。今回の現象は、私たち一人ひとりの「分散避難」ならぬ「分散備蓄」の大切さを教えてくれているように感じます。パニックを避けるためにも、日頃からの備えがいかに重要であるかを、私たちはこの2019年の教訓から学ぶべきでしょう。
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