EV普及の鍵を握る「ニッケル」が5年ぶり高騰!インドネシアの禁輸措置が電池市場に与える衝撃と未来

次世代のモビリティ社会を支えるリチウムイオン電池。その主役とも言える電気自動車(EV)の普及が加速する一方で、供給網の最前線では今、激震が走っています。2019年に入り、電池の重要原料である「ニッケル」の国際価格が、他の非鉄金属を横目に独歩高の様相を呈しているのです。

ロンドン金属取引所(LME)では、2019年9月に一時1トン当たり1万8850ドルという、約5年ぶりの高値を記録しました。これは年初の安値と比較すると、わずか数ヶ月で8割近い上昇率となります。この背景には、主要産出国であるインドネシアが打ち出した、あまりに急進的な政策転換がありました。

SNS上では「EVシフトで電池が必要なのに、原料がこれほど高騰しては普及の足かせになるのでは?」といった懸念の声が広がっています。また、投資家の間でも「銅やアルミが低迷する中でニッケルだけが別世界だ」と、その異様な値動きに対する驚きと警戒感が隠せない状況となっています。

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インドネシアの「禁輸前倒し」がもたらした市場の動揺

事態を急変させたのは、インドネシア政府による「ニッケル鉱石の輸出禁止」の決定です。元々は2022年まで輸出が認められるはずでしたが、2019年9月初め、政府はこれを2020年1月からに前倒しすると突如発表しました。この「禁輸」とは、資源を加工前の石の状態で国外へ出すことを禁じる措置を指します。

インドネシア側には、自国内に「精錬所(せいれんじょ)」、つまり鉱石から不純物を取り除き、純度の高い金属を取り出す工場を建設させたいという狙いがあります。資源をそのまま売るのではなく、付加価値を高めてから輸出することで自国の経済発展を狙っていますが、この強硬姿勢に市場関係者は虚を突かれた形です。

世界第2位の生産を誇る同国の供給が止まる影響は甚大です。首位のフィリピンも環境規制で新規開発が難しく、第3位のニューカレドニアも政情不安を抱えています。特定の国々に供給を依存する「カントリーリスク」が、リチウムイオン電池の安定生産における最大の壁として立ちはだかっていると言えるでしょう。

2040年には需要3割へ!電池コスト増への懸念と対策

現在、ニッケルの用途はステンレス鋼向けが約7割を占めていますが、2040年には電池向けが3割に達するとの予測もあります。需要が右肩上がりの中、今回の急騰は「投機マネー(値上がり益を狙う短期資金)」を呼び込みやすく、市場規模が小さいニッケルは価格が乱高下しやすい特性を持っています。

筆者の視点としては、この原材料コストの増大が、EVの低価格化を阻む「アキレス腱」になることを危惧しています。どんなに優れた技術でも、庶民の手が届かない価格では社会を変えることはできません。今後はニッケルやリチウムの安定確保に加え、コバルトなどの希少資源を使わない代替技術の確立が急務です。

持続可能なEV社会を実現するためには、資源を巡るナショナリズムに左右されない、より強固で多角的なサプライチェーンの構築が求められています。2019年10月21日現在のこの混乱は、私たちがエネルギー転換期において、いかに特定の資源に依存しているかを浮き彫りにした教訓と言えるはずです。

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