皆様は、福岡県に存在する神秘的な世界遺産をご存知でしょうか。今回は日本文学研究者のロバート・キャンベル氏が、2019年10月13日に訪れた宗像大社での体験をもとに、その魅力に迫ります。日本列島をすっぽりと覆った台風19号が過ぎ去った直後の静けさの中、氏は神聖な地へと足を運びました。
昨今、SNS上でも「心が洗われる究極のパワースポット」として、宗像大社を訪れる人々の感動的な投稿が後を絶ちません。実はこの大社、九州本土にある「辺津宮(へつみや)」、大島に位置する「中津宮(なかつみや)」、そして絶海の孤島である「沖津宮(おきつみや)」という三つの宮の総称なのです。
中でも沖津宮がある沖ノ島は、島そのものがご神体とされる極めて神聖な場所となります。一般の人々の立ち入りは厳格に禁じられており、4世紀から約500年間も続いた古代祭祀の遺跡が手つかずのまま残されているそうです。日本の国家形成や大陸との交流を知る上で、掛け替えのない文化のルーツと言えるでしょう。
神職が祈りを捧げる玄界灘の孤島
キャンベル氏は福岡空港から車で北上し、そこからフェリー「おおしま」で約25分揺られ、玄界灘に浮かぶ大島へ渡りました。東京の喧騒から離れるにつれ、徐々に日常の縛りが解けていくのを感じたといいます。大島には、上陸できない沖ノ島を遠くの海辺から拝むための「遙拝所(ようはいじょ)」が設けられています。
波止場近くの社務所では、神職の方々が10日間の交代制で常駐しているとのことです。真冬の荒れ狂う海であっても、毎朝必ず冷たい海に入って心身を清める「禊ぎ(みそぎ)」を行います。そして国家の平和と安全を祈願する「日供祭(にっくさい)」という神事を、一日も欠かすことなく続けておられます。
SNSで話題の「一年安鯛」と地元漁師の思い
大島にある中津宮の境内には、明治時代よりもはるか昔に造られた、歴史を感じさせる社殿が佇んでいます。ふと軒下を見上げると、木桶の中に色鮮やかな鯛の形をした張り子の飾りが山積みになっていました。これらは「一年安鯛」と名付けられたおみくじで、可愛い写真が撮れるとSNSでも大人気です。
傍に置かれたおもちゃの釣り竿を使って引き当てた大吉には、「学問 安心して勉強せよ」と記されていたそうです。また、現地で出会った漁師歴40年以上の沖西さんは、昔はこの神聖な石段が子供たちの絶好の遊び場だったと、懐かしそうに笑顔で振り返ってくれました。
通信技術が発達した現代でも、自然に対する畏敬の念は決して消えません。出港の前後には必ず無事を祈って手を合わせるというお話からは、海と共に生きる人々の力強さが伝わってきます。自然を相手にする漁師にとって一番大切なのは「経験」であると、豪快に笑う姿が非常に印象的だったことでしょう。
古代祭場・高宮祭場で感じる時間の流れ
旅の最後は、再び船で本土の辺津宮へ戻り「高宮祭場(たかみやさいじょう)」へと向かいます。ここは宗像三女神が降臨したと伝えられる、現在でも神事が執り行われる数少ない古代の祭場です。小高い丘の上の神域には人工的な社殿が存在せず、周囲を取り囲む古木が風に揺れる心地よい空間が広がっています。
キャンベル氏はそこで「時間が止まったのではなく、時という大きな潮流の中を自分が流れていく感覚」を抱いたと語りました。2019年10月23日現在、慌ただしい現代社会を生きる私たち編集部としても、このような壮大な歴史の息吹に触れて魂をリセットする時間は必要不可欠だと強く感じます。皆様もぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
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