米中貿易摩擦の解消に向けた動きに、冷や水が浴びせられました。2019年11月08日、ドナルド・トランプ米大統領は、中国側が主張していた「段階的な追加関税の撤廃」について、正式に合意した事実はないと断言したのです。中国政府が前日に「関税取り消しで一致した」と自信満々に発表していただけに、両国の認識に埋まったはずの溝が再び露呈する形となりました。
ホワイトハウスで記者団の前に立ったトランプ氏は、「中国は関税の取り下げを強く望んでいるが、私は何も承諾していない」と強調しました。そもそも関税とは、輸入品に対して国が課す税金のことです。これを高く設定することで、自国製品の競争力を守る武器となりますが、同時に物価上昇を招く諸刃の剣でもあります。トランプ氏は、中国側も「全廃」は無理だと承知しているはずだと、強気な姿勢を崩していません。
SNS上ではこの展開に対し、「またトランプ節が炸裂した」「いつものディール(取引)の手法ではないか」といった冷ややかな反応と、「世界経済への影響が心配で目が離せない」という不安の声が入り混じっています。市場は関税撤廃を期待して好感していただけに、この発言によるショックは計り知れません。交渉の進展を期待させる報道が出た直後に否定が入る流れは、もはや米中協議の「お約束」となりつつあります。
トランプ氏がここまで強硬な姿勢を見せる背景には、2020年に控える大統領選挙に向けた思惑が見え隠れしています。彼は首脳会談の場所として、アイオワ州のような農業が盛んな地域を候補に挙げました。これは、貿易戦争によって中国への輸出が滞り、苦境に立たされている米国の農家に対して「私は皆さんのために戦っている」と直接アピールしたい狙いがあるのでしょう。
一方で、中国の習近平国家主席は、米国本土での開催には慎重な構えを見せていると伝えられています。本来であれば、チリで開催予定だった国際会議に合わせて会談が行われるはずでしたが、現地の治安悪化で中止に追い込まれたことが、スケジュール調整をさらに難しくしています。中立的な欧州での開催案も浮上していますが、両首脳がどこで握手をするのか、場所選びすら一筋縄ではいかない状況なのです。
私個人の見解としては、トランプ大統領の今回の発言は、最終合意に向けた「最後のアピール」ではないかと考えています。中国から最大限の譲歩を引き出すために、あえて合意を否定して揺さぶりをかけるのは、彼の得意とする交渉術そのものです。しかし、このような不透明な状況が続けば、世界中の企業が設備投資を控えるなど、実体経済へのダメージが深刻化するのは避けられないでしょう。
現在、米国は2019年12月15日にスマートフォンなどを含む大規模な追加関税の発動を予告しています。これが現実のものとなれば、消費者の生活にも直接的な影響が及びます。中国側は「対等な割合での関税取り消し」を譲れない条件として突きつけており、このデッドラインまでに両国がどこで折り合いをつけるのか、一刻の猶予も許されない局面が続いていくことでしょう。
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