定食チェーンの代名詞として親しまれている大戸屋ホールディングスが、経営の大きな転換点を迎えています。2019年11月5日、同社は2019年4月から2019年9月期における連結営業損益が、1億9000万円の赤字に転落する見通しであると公表しました。前年の同時期には1億700万円の黒字を確保していただけに、今回の急激な業績悪化は業界内外に大きな衝撃を与えています。
当初、会社側は4000万円の黒字を予想していましたが、現実は厳しい数字となりました。特筆すべきは、2001年に当時の店頭市場(現在のジャスダック)へ上場して以来、中間期として営業赤字を計上するのは今回が初めてという点です。長年築き上げてきた「健康的で質の高い定食」というブランド力が、今まさに試練の時を迎えているといえるのではないでしょうか。
客離れとコスト増の二重苦に喘ぐ現場
赤字転落の主な要因は、国内既存店の売上高が振るわなかったことにあります。消費者の嗜好の変化や競合他社との激しいシェア争いの中で、思うように客足を伸ばせませんでした。ここでいう「既存店売上高」とは、開店から1年以上が経過した店舗の売上を指し、チェーン店の勢いや体力を測る重要な指標ですが、その数字が低迷していることは、ブランドの地力が弱まっているサインかもしれません。
さらに追い打ちをかけたのが、深刻な人件費の高騰です。労働力不足が慢性化する中で、スタッフを確保するためのコストが膨らみ、利益を圧迫する構造となっています。最終的な純損益も1億7000万円の赤字となる見込みで、売上高は従来予想を7億円も下回る123億円にとどまりました。効率化とクオリティの維持という、非常に難しいバランス調整を迫られているのが現状でしょう。
SNS上では、このニュースに対して「大戸屋の定食は好きだけど、最近は少し高く感じる」「提供時間が長くなった気がする」といった、現場のサービス低下を懸念する声が多く散見されます。一方で「なくなってほしくないから応援したい」という根強いファンのエールもあり、期待値は依然として高いようです。丁寧な調理を売りにしてきたからこそ、今の苦境をどう乗り越えるのかが注目されます。
筆者の個人的な見解としては、大戸屋が守り続けてきた「手作り感」こそが最大の武器であり、安易なコストカットでその本質を損なうべきではないと考えます。今の時代、利便性だけで選ばれる店は数多くありますが、家庭の味を再現できる場所は貴重です。2019年という激動の年を乗り越え、再び活気ある店内を取り戻すためには、顧客が納得できる「価値」の再定義が必要不可欠となるはずです。
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