2019年10月に日本を襲った台風19号、そしてそのわずか2週間後の記録的な豪雨は、各地の河川に氾濫をもたらし、社会に大きな衝撃を与えました。これほどまでに被害が拡大した背景には、地球温暖化に伴う気候変動の影響が色濃く影を落としています。気象庁も、昨年の西日本豪雨を振り返り、海水温の上昇による水蒸気量の増加が豪雨を激甚化させたと公式に言及しました。これは、私たちの住む環境が以前とは明らかに異なるフェーズに入ったことを示す、極めて重要な警鐘といえるでしょう。
こうした未曾有の危機に対し、私たちはどのように立ち向かうべきなのでしょうか。国土技術政策総合研究所(国総研)の水防災システム研究官である服部敦氏は、行政による堤防建設などのハード面と、住民や企業によるソフト面の両立が不可欠だと説いています。SNS上でも「これまでの対策では通用しない」「自分の命をどう守るか具体策が欲しい」といった切実な声が噴出しており、これまでの防災の常識をアップデートする時期が来ているのは間違いありません。もはや行政任せでは、この激甚化する自然の猛威を防ぎきることは困難なのです。
水害リスクマネジメントで「目に見える」備えを
服部氏が提唱するのは「水害リスクマネジメント」という画期的な考え方です。これは、自分たちの行動によって水害の被害をどれだけ軽減できるかを数値や情報で可視化し、具体的なアクションにつなげる手法を指します。例えば、鉄道会社による「計画運休」やコンビニエンスストアの臨時休業などは、混乱を未然に防ぐ有効な手段です。こうした企業の意思決定を支えるためには、行政側がより精緻な予測情報を提供し、官民が密に連携するプラットフォームを構築することが急務となっている状況にあります。
一方で、私たち住民一人ひとりに求められるのは「マイ・タイムライン」の作成です。これは、台風の接近などのタイムライン(時系列)に合わせて、「いつ」「誰が」「何をするか」をあらかじめ整理しておく防災行動計画のことです。ハザードマップ(被害予測地図)を確認し、浸水のリスクがある場所を把握した上で、自分専用の避難計画を立てることが命を分ける鍵となります。行政が提供する情報を「受動的」に待つのではなく、自ら情報を取捨選択して動く「能動的な防災」こそが、これからのスタンダードになるでしょう。
編集者としての私見ですが、2019年11月06日現在の状況を鑑みると、防災はもはや「特別な行事」ではなく「日常の経営・生活戦略」の一部になったと感じます。堤防やダムといったインフラ整備には膨大な時間が必要ですが、温暖化による豪雨の激化はそのスピードを軽々と追い越そうとしています。だからこそ、服部氏が指摘するように、行政のアドバイスを民間が活かす「情報の双方向性」を強化すべきです。一人ひとりがリスクを自分事として捉え、賢く備える知恵を持つことこそが、最強の防波堤になるはずです。
コメント