今、お隣の韓国が国家の威信をかけて、次世代エネルギーの主役である「水素」に全力を注いでいます。2019年11月01日現在、文在寅政権は官民一体となって、従来の石油や天然ガスに代わる新たな基軸エネルギーとして水素を位置づける「水素社会」の実現へ舵を切りました。
その中心となるのが、走行中に水しか排出しない究極のクリーンカー、燃料電池車(FCV)です。韓国政府は2040年までに、累計で620万台ものFCVを生産するという驚くべき目標を掲げています。これは、単なる移動手段の変革ではなく、産業構造そのものを根底から変える革命と言えるでしょう。
未来車1位を目指す文政権の「水素経済活性化ロードマップ」
2019年10月15日、ソウル近郊の現代自動車研究所で開催された戦略発表会において、文大統領は「2030年までに未来型自動車の競争力で世界1位を目指す」と力強く宣言しました。政府が作成した「水素経済活性化ロードマップ」は、その野心的なビジョンを具体化したものです。
ここで言う「水素経済」とは、水素を主要なエネルギー源として活用し、経済成長と環境保護を両立させる仕組みを指します。具体的には、公共交通機関へのFCV導入や、水素ステーション整備への巨額の補助金投入が含まれており、まさに国を挙げた一大プロジェクトが進行しているのです。
さらに、2019年9月には「水素モデル都市」構想も発表されました。これは、特定の区画内でオフィスや家庭の電力をすべて水素で賄うという実験的な試みです。2022年までに全国3カ所で実証実験が始まる予定で、政府がインフラ費用の半分を負担するという手厚い支援体制を整えています。
現代自動車の技術力が牽引する韓国のプライド
韓国がこれほどまでに強気な姿勢を見せる背景には、現代自動車が持つ高い技術力への絶対的な自信があります。同社は2013年に世界で初めてFCVの量産化に成功しており、2代目モデルの「NEXO(ネクソ)」についても、2020年には年間1万台以上の販売を計画しています。
ここで、改めて「FCV(燃料電池車)」について解説しましょう。これは、搭載されたタンクから供給される水素と、空気中の酸素を化学反応させて電気を取り出し、モーターを回して走る車です。ガソリン車のような排ガスが出ないため、地球温暖化対策の「切り札」として期待されています。
SNS上では「韓国のスピード感は凄まじい」「インフラが整えば一気に普及しそう」といった期待の声がある一方で、「水素ステーションの安全性が心配」「EV(電気自動車)との競争に勝てるのか」といった慎重な意見も飛び交い、非常に高い注目を集めている状況です。
インフラ整備の壁と世界的な覇権争いの行方
夢のような水素社会ですが、課題も少なくありません。現在、韓国内の水素ステーションはわずか15カ所にとどまっており、これを2040年までに1200カ所まで増やすという計画は、極めてハードルの高い挑戦です。急速に普及が進むEVと比較して、充填拠点の少なさが最大の弱点となっています。
しかし、FCVには「充填時間の短さ」や「航続距離の長さ」という、長距離輸送に適した大きなメリットがあります。実際にサムスン重工業が燃料電池を活用した石油タンカーの開発に乗り出すなど、自動車以外の分野でも水素の活用範囲は確実に広がりを見せています。
編集者の視点として、この韓国の猛追は、日本のトヨタ自動車などが進めるFCV戦略にとっても強力なライバル出現を意味すると感じます。技術で先行しても、国を挙げた社会実装のスピードで追い抜かれるリスクは否定できません。今、まさに水素を巡る世界的な覇権争いが幕を開けたのです。
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