空調設備業界をリードする高砂熱学工業が、工場の「捨てられる熱」を宝物に変える画期的なプロジェクトを動かしています。2020年の事業化を目指し、廃熱を効率的に蓄えて移動させる新システムの開発が加速しているのです。
これまで工場の熱は、配管が届く範囲でしか再利用できないのが常識でした。しかし今回の取り組みでは、熱を「蓄熱材」という特殊な素材に閉じ込め、トレーラーで別の場所へ運んで活用します。まさに「熱のデリバリー」が実現しようとしています。
SNS上では「エネルギーの地産地消が進む」「工場地帯の近くに住むメリットが増えるかも」といった期待の声が上がっています。環境意識が高まる中、この技術は自治体や企業からも熱い視線を浴びている注目のトピックと言えるでしょう。
魔法の素材「ハスクレイ」が廃熱利用の常識を覆す
このシステムを支える核心的な技術が、産業技術総合研究所によって生み出された「ハスクレイ」という物質です。これはアルミニウムケイ酸塩などを主成分とした、熱を出し入れできる不思議な性質を持つ素材を指します。
専門的に解説すると、ハスクレイは空気に触れると熱を吸い込み、逆に水に触れると蓄えていた熱を一気に放出するという特性を備えています。この反応をコントロールすることで、必要な時に必要な場所で熱を取り出すことが可能になるのです。
従来の蓄熱材として知られる「PCM(相変化物質)」と比較して、ハスクレイの蓄熱密度は2倍から4倍という驚異的な性能を誇ります。よりコンパクトな量で、より多くのエネルギーを運べる点が、この技術の最大の武器と言えます。
羽村市での実証実験:2019年夏から始まった未来への挑戦
高砂熱学工業は、2019年夏より東京都羽村市にて本格的な実証実験を開始しました。このプロジェクトは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、産官学が連携して取り組む大規模な試みです。
具体的な実験では、市内の日野自動車の工場から発生する廃熱をハスクレイに回収しています。蓄えられた熱は工場内の空調に使われるだけでなく、なんと約2キロメートル離れたプール施設までトレーラーで運ばれ、温水の供給にも役立てられています。
この実験は2020年2月まで継続される予定であり、どれほどの経済効果があるのか、緻密なデータ分析が進められています。私たちの身近な施設が、誰にも気づかれぬうちに「工場の熱」で温まる日がすぐそこまで来ているのかもしれません。
膨大な未利用エネルギーを救い出す「編集者の視点」
NEDOの試算によれば、国内の主要工場から排出される廃熱は年間743ペタジュールに達します。これは約2000万世帯分のエネルギー消費量に相当しますが、その多くは200度以下の低温であるため、これまでは利用されずに捨てられてきました。
筆者は、この「もったいない」の解消こそが、真の脱炭素社会への鍵だと確信しています。単に新しいエネルギーを創るだけでなく、今ある資源を使い切る発想への転換は、企業としての姿勢が問われる非常に誠実なアプローチではないでしょうか。
課題は1キログラムあたり数千円とされるハスクレイのコストですが、石原産業などの量産パートナーとの協力により、早期の価格低減が期待されています。コストを乗り越えた先にある、クリーンな熱供給の未来を力強く応援していきたいものです。
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