今、首都圏では企業の研修施設や保養所を大胆に再生した「リノベーションホテル」の開業が相次ぎ、旅行者の注目を集めています。リノベーションとは、既存の建物に大規模な改修を施し、用途変更や機能向上によって新たな価値を吹き込む手法のことです。かつての硬い雰囲気の会議室が、驚くほどモダンで快適な空間に生まれ変わっているのです。
総合不動産開発を手掛けるシマダハウスは、2019年7月に神奈川県葉山町で「葉山うみのホテル」をオープンさせました。ここは元々アサヒビールの研修施設でしたが、その面影をあえて残しつつ、スタイリッシュな宿泊拠点へと変貌を遂げています。特に研修用の大部屋を活用したカプセル型の客室「バンクルーム」は、秘密基地のようなワクワク感があると話題です。
宿泊空白地帯を狙う戦略とSNSでの期待感
葉山町は日帰り観光客が多く、宿泊施設が意外にも少ない「空白エリア」として知られてきました。そのため、この新ホテルの登場は観光客だけでなくビジネス層からも熱い視線が注がれています。SNS上では「企業の保養所だったとは思えないほどお洒落!」「バンクルームならリーズナブルに泊まれるので、週末のひとり旅に最適」といった期待の声が広がっています。
さらにこのプロジェクトがユニークなのは、建物の一部を2020年から有料老人ホームとして活用する計画がある点でしょう。多角的な運用によって収益を安定させる手法は、不動産活用の新しいモデルケースといえます。また、箱根町でも小田急電鉄が2019年8月に、保険会社の保養所を再生した「箱根ゆとわ」を開業し、地域の活性化に一役買っています。
高級ホテルと民泊の「隙間」を埋める新たな体験
昨今の箱根などの観光地では宿泊価格が高騰していますが、こうしたリノベホテルは「高級宿」と「安価な民泊」の中間を埋める存在になります。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、訪日外国人や日本の若年層が求める「手頃だけど個性的」というニーズに合致しているのでしょう。ただ宿泊するだけでなく、その場所の歴史や物語を感じられるのが魅力です。
私自身の視点から言えば、古くなった建物を壊さずに再利用するこの流れは、環境負荷の低減と文化継承の両立において非常に意義深いと感じます。画一的なビジネスホテルにはない、その土地や建物固有の「味」こそが、目が肥えた現代の旅行者を惹きつける鍵となるはずです。今後は、立地の魅力をどうサービスに反映させるかが、さらなる人気定着の分かれ目になるでしょう。
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