中東情勢の荒波の中で、思わず耳を疑うような言葉が飛び出しました。2019年10月下旬、シリアのアサド大統領が国営メディアを通じて、対立関係にあるはずのトランプ米大統領を「歴代で最高の大統領だ」と評したのです。一見すると宿敵への称賛に見えますが、その裏にはアメリカの外交姿勢を辛辣に笑い飛ばす意図が隠されています。
SNS上ではこの異例の発言に対し、「究極の皮肉だ」「米国の迷走が露呈した」といった驚きや冷ややかな声が相次いでいます。アサド氏がトランプ氏をあえて持ち上げたのは、アメリカが掲げる「正義」がいかに脆いものであるかを世界に印象付けるためでしょう。言葉通りの賛辞ではなく、相手の失策を逆手に取った外交的な揺さぶりと言えるはずです。
「オウンゴール」が招いた独裁政権とロシアの台頭
なぜこれほどまでの皮肉が成立してしまうのでしょうか。その背景には、2019年10月6日にトランプ政権が表明した、シリア北部からの米軍撤退方針が深く関わっています。これまでアメリカは、過激派組織IS(イスラム国)との戦いにおいて、地上部隊として奮闘したクルド人勢力を支援してきました。しかし、今回の撤退はこの盟友を事実上見放す決断でした。
この状況をサッカーに例えるなら、自陣のゴールにボールを叩き込む「オウンゴール」のような自滅行為と映ります。アメリカが身を引いたことで生じた空白地帯には、アサド政権軍やその後ろ盾であるロシアが影響力を強める結果となりました。専門用語で言えば、地域内のパワーバランス(勢力均衡)が、アメリカの意図に反して独裁政権側に有利に働いてしまったのです。
個人的な見解を述べさせていただくと、国家間の信頼関係は一度崩れれば修復は困難です。戦ってきた仲間を戦略的な都合で切り捨てる姿勢は、中東におけるアメリカの求心力を著しく低下させるでしょう。アサド大統領の言葉が「本音」の賛辞に聞こえてしまうほど、現在のトランプ外交は敵対勢力にとって好都合な状況を作り出しているのかもしれません。
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