小売業の常識を覆す「RaaS」とは?米国発、データが変える次世代デパートの最前線

2019年11月22日、米国の流通現場では「RaaS(リテール・アズ・ア・サービス)」という革新的なビジネスモデルが大きな波紋を広げています。これは「サービスとしての小売」を意味する言葉であり、移動手段をサービス化する「MaaS」の概念を小売業界に持ち込んだものです。従来の店舗が商品を売って利益を得る場所だったのに対し、RaaSは店舗のスペースや接客体験そのものを「機能」としてブランドに提供する仕組みを指します。

一見すると昔ながらの「場所貸し」のように思えるかもしれませんが、本質的な違いは、データ分析レポートを有償で提供する点にあります。RaaSを利用するブランド側は、単なる売上以上に、自社製品がリアルな場で消費者にどう評価されるのかという「価値分析」を重視しています。これまでの小売りの常識では考えられなかった、体験と情報の提供に対する対価が支払われるという、新しい経済圏が誕生しているのです。

スポンサーリンク

未来を体現する「ネイバーフッド・グッズ」の挑戦

「デパートの未来」と称賛されるネイバーフッド・グッズは、2019年9月に約1100万ドルの資金調達を成功させ、業界の注目を一気に集めました。2018年末にダラスで1号店を構えた彼らは、2019年末までにニューヨークへ進出し、2020年からはさらに6店舗の拡大を計画しています。1300平方メートルという広大な空間には、洗練されたデザインのブランドブースが並び、中央には飲食を楽しめるバーが設置されるなど、驚くほどモダンな空間が広がっています。

店内には58ものブランドがひしめき合っていますが、その中心は「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」ブランドです。D2Cとは、メーカーが自社で企画・製造した商品を、卸売を通さずSNSや自社サイトで直接消費者に販売する形態を指します。ネット上での活動が主だった彼らが、リアルの場での認知度向上や、新規顧客との接点を持つための「ショーケース」として、この最先端デパートを活用しているのでしょう。

現場の接客も非常にスマートで、各ブースのタブレット端末で情報を得られるだけでなく、絶妙なタイミングで店員が声をかけてくるデジタルと人の融合が図られています。支払いはレジに並ぶ必要がなく、店員が持つ端末でその場で行われるため、ショッピングのストレスも皆無です。SNSでは「買い物がかつてないほどスムーズ」「展示会のようでワクワクする」といった好意的な声が数多く寄せられています。

AIが見守る顧客動線と老舗の焦り

最大の特徴は、店内に配置されたカメラとAIによる高度な分析にあります。顧客がどこを歩き、どの商品に興味を示したのかを性別や年齢層とともにデータ化しているのです。2019年11月22日現在、これらをリアルタイムで分析するツールの開発も進んでいます。監視されている圧迫感は全くなく、消費者は純粋に体験を楽しみ、ブランド側は貴重なマーケティングデータを得られるという「三方良し」の構造が成り立っています。

こうした成功を受けて、老舗デパートのメイシーズもRaaSモデルの導入に向けた実験を開始しました。私自身の見解としては、これは単なるブームではなく、インターネットに押される既存小売業が生き残るための「唯一の解」であると感じます。商品を売る場所から、価値を検証する場所へ。ビジネスの本質が劇的に変化する過渡期に私たちは立っています。大手小売りの成否も含め、この動向からは一刻も目が離せません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました