2019年10月中旬、東日本を縦断し甚大な被害をもたらした台風19号の発生から、およそ1カ月半が経過しました。静岡県内でも3名の尊い命が失われ、住宅の倒壊や断水といった深刻な爪痕が残されています。しかしその一方で、過去の苦い経験から学んだ対策が、さらなる悲劇を食い止めたという事実も浮き彫りになりました。
静岡県の植田達志危機報道官は、長野県の千曲川のような堤防決壊が県内で起きなかったことを「幸いだった」と総括しています。特に伊豆半島を流れる狩野川では、支流での浸水こそあったものの、本流の氾濫は免れました。これは1958年の甚大な被害を機に建設され、1965年に完成した「狩野川放水路」が、増水した水を海へ逃がす役割を完璧に果たしたおかげでしょう。
国土交通省の推定によれば、この放水路が氾濫を防いだことによる経済的な被害防止効果は、なんと約7400億円にものぼるといいます。SNS上でも「先人の知恵と公共事業が街を守ってくれた」「もし放水路がなかったらと思うとゾッとする」といった、土木インフラの重要性を再認識する声が数多く寄せられており、長年の備えが県民の暮らしを支えた形です。
命をつなぐ最新テクノロジーと情報の力
堤防は守られたものの、県内では1000棟近い床上浸水が発生し、15市7町で膨大な災害廃棄物が出る異例の事態となりました。ハード面の対策には時間と巨費を要するため、今後はソフト面、つまり「情報の伝達」が人命を守る鍵となります。そこで注目されているのが、2019年10月までに県内102の中小河川に導入された「危機管理型水位計」です。
危機管理型水位計とは、川の水が一定の高さに達した際、集中的に観測を行う低コストな観測装置を指します。県の防災情報サイト「サイポスレーダー」では、このデータをリアルタイムで公開しており、2019年10月12日には過去最多となる15万件以上のアクセスを記録しました。川の状態を数値で可視化できたことが、住民の避難判断を強力に後押ししたことは間違いありません。
また、2019年6月に運用が始まったばかりのスマートフォン向け防災アプリも、台風直前の2日間だけで利用者が9000人も急増しました。アプリでは、自分が住む場所の危険度を示す「ハザードマップ」が手軽に確認できます。専門的な地図情報をポケットに入れて持ち運べる利便性は、現代の防災において必須のツールといえるのではないでしょうか。
私は、こうした「インフラによる防御」と「情報のアップデート」の両輪こそが、これからの防災の理想形だと確信しています。県は2019年12月1日の地域防災訓練にて、ハザードマップを活用した風水害対策を重点的に実施する予定です。いつ起こるかわからない大地震や激甚化する気象災害に対し、私たちは常に最新の情報を取り入れる意識を持つべきでしょう。
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