メディア業界の深層を鋭く描いた一冊の書籍「2050年のメディア」が、いま新聞業界に大きな激震を走らせています。2019年11月26日現在、この本が暴き出した実態はあまりに衝撃的です。特に注目を集めているのは、インターネットの巨人であるヤフーが新聞社に支払う「コンテンツ料」の驚くべき格差でしょう。一部の大手新聞社と地方紙の間には、なんと10倍もの開きがあるというのです。
コンテンツ料とは、新聞社が心血を注いで取材した記事をヤフーなどのサイトに掲載する際、その対価として支払われる使用料を指します。SNS上では「地方紙の価値が低く見積もられすぎではないか」といった懸念の声や、「プラットフォームの力があまりに強大すぎる」という嘆きが数多く寄せられています。情報の作り手である新聞社が、配信先であるヤフーに対して圧倒的に不利な立場に置かれている実態が浮き彫りになりました。
さらに波紋を広げているのが、ヤフー側の冷ややかな視線です。記事の安さに不満を漏らす新聞社に対し、ヤフー関係者が「あいつらはシャブ漬けだ」と比喩的に表現していたというエピソードは、業界内に深い失望を与えました。これは一度ヤフーの膨大なアクセス数に依存してしまうと、そこから抜け出せなくなる中毒的な依存状態を揶揄した言葉です。かつての取材対象を見下すような姿勢には、メディアへの敬意が欠如していると感じざるを得ません。
巨大プラットフォームの軍門に降った新聞社の後悔
月間150億ページビューという圧倒的な集客力を誇るヤフーに対し、新聞社は身動きが取れなくなっています。契約内容に納得がいかなくとも、もし記事の提供を停止すれば、記事使用料だけでなく自社サイトへの貴重な流入経路まで失ってしまうからです。ある新聞社の担当者は、初期の契約時に設定された格安の料金設定を今さら後悔していますが、時すでに遅し。交渉の主導権は完全にヤフーへと握られているのが現状でしょう。
ヤフーの初代社長である井上雅博氏は、かつて「新聞を徹底的に模倣せよ」と号令をかけ、各社を個別に口説き落としてコンテンツを集めたといいます。新聞社のコンテンツが持つ価値を、皮肉にも誰よりも冷静に見抜いていたのはヤフーの方でした。2019年に入り、ヤフーはLINEとの経営統合を発表し、さらなる巨大化へ向かっています。利便性が高まる一方で、情報源となるメディアの地位がさらに低下することを私は強く危惧しています。
現在、ヤフーの親会社を率いる川辺健太郎社長の関心は、もっぱらスマホ決済などの金融分野に向いていると囁かれています。メディア事業への関心が薄いトップに対し、いくら「原稿料が安すぎる」と訴えても、その声が届く可能性は低いと言わざるを得ません。私は、新聞社がもはやプラットフォーマーに慈悲を乞う段階は終わったと考えます。他者に依存せず、コンテンツに価値を感じてくれる読者との「エンゲージメント」を磨くべきです。
エンゲージメントとは、メディアと読者の間の深い信頼関係や繋がりの強さを意味します。2019年11月26日の今、新聞社が生き残る道は、無料バラマキ型のモデルから脱却し、特定の読者が「お金を払ってでも読みたい」と思える独自性を追求することに他なりません。巨大な壁に立ち向かうには、プラットフォームに頼らない自立したファン作りこそが、唯一にして最強の武器になるはずだと私は確信しています。
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