2020年度(令和2年度)から導入される「大学入学共通テスト」における英語の民間試験活用に関して、2019年5月31日、文部科学省は衝撃的な調査結果を発表いたしました。全国82の国立大学のうち、東京大学や京都大学といった、いわゆる「難関校」を含むおよそ3割にあたる25校が、英語能力の出願資格として「英検準2級相当」以上を求めるというのです。このニュースは、受験生とその保護者の方々はもちろん、教育関係者にも大きな波紋を広げました。新しい入試制度が、いよいよ現実の課題となって迫ってきたことを示していると言えるでしょう。
大学入試改革の目玉の一つである英語の民間試験は、「読む・聞く」に加え、「話す・書く」を加えた英語の4技能を総合的に評価することを目的としています。具体的には、実用英語技能検定(英検)やGTECなど、8種類の試験が大学入試センターによって認定されており、それぞれの大学が活用方法を独自に決定することとされていました。文部科学省が2019年5月13日時点の活用方針を調査したところ、国立大学82校のうち、実に79校が何らかの形でこの民間試験を利用すると回答しています。
特に注目を集めたのは、英語力を測る国際的な基準である「CEFR」(セファール:Common European Framework of Reference for Languages)を用いた出願条件です。このCEFRは、欧州言語共通参照枠とも呼ばれる6段階評価の枠組みで、最も低いレベルから「A1」「A2」「B1」「B2」「C1」「C2」と続きます。東京大学を始めとする旧帝国大学5校など、難関とされる大学の多くは、下から2番目のレベルである「A2」以上を、共通テストを利用した一般選抜の出願条件として設定しました。この「A2」レベルは、具体的な試験スコアに換算すると「英検準2級」程度に該当するものと認識されています。
しかしながら、この民間試験の導入に対しては、かねてより「公平性」を巡る大きな懸念が存在していました。一部の受験生が塾や予備校で対策を重ねられる一方で、経済的な理由や地理的な制約から、十分な受験機会や対策が取れない受験生との間で、大きな格差が生じてしまうのではないかという懸念です。実際、SNSなどのインターネット上では、「都市部の裕福な家庭が有利になるだけではないか」「地方の高校生はどうすればいいのか」といった批判的な意見が数多く見受けられました。この「受験格差」の問題は、新制度導入を前にして、最も議論を呼んでいる論点の一つであることは間違いありません。
文部科学省の調査結果によれば、当初想定されていたよりも出願条件を緩めた大学が多かったと推測されます。難関大学でさえも「英検準2級相当」に留めた背景には、こうした受験機会の地域差や経済的な負担といった懸念を無視できなかった事情があるのでしょう。私は、この「緩和」の動きは、国立大学が受験生の声や社会の批判に真摯に向き合った結果だと評価いたします。全ての受験生に開かれた公平な入試の実現は、大学入試制度の根幹をなすものであり、そのバランスをどのように取るかが問われていると言えます。新しい制度の波が押し寄せる中、大学側の柔軟な姿勢が、今後も求められることになるでしょう。
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