ソフトバンクグループ(SBG)は2019年6月19日、東京都内で開催した定時株主総会で、孫正義会長兼社長が人工知能(AI)分野への巨額投資をさらに加速させ、「チャンスを総取りする」という強い決意を表明されました。この大胆な「AI革命」への指揮者宣言は大きな話題を呼んでいますが、その裏側では、株主からの株主還元に関する要求や、傘下の米通信子会社スプリントの先行きに対する懸念も同時に噴出し、会場には期待と不安が交錯する熱気が立ち込めていた様子です。約2,000人近い株主が出席したこの総会は、SBGの未来を占う上で非常に重要なものとなりました。
特に多くの株主の関心を集めたのは、米同業のTモバイルUSとの合併交渉が難航しているスプリントの動向でした。合併の承認が、米当局である米司法省で遅れている現状に対し、「スプリントの件を聞きに来た。孫社長から直接説明が欲しい」と、先行きを危惧する声が少なくありませんでした。これに対し孫社長は、2013年のスプリント買収時から「単独で競合の上位勢と戦うのは難しい」と感じていたことを明かし、合併承認が得られることを強く望んでいると述べられました。また、マルセロ・クラウレSBG副社長兼スプリント会長は、合併会社が次世代通信規格である5Gの技術を牽引することを公約しているとし、「楽観的に見守っている」とコメントされ、株主の懸念払拭に努めていらっしゃるようです。
また、SBGの経営方針として避けて通れないのが、株主還元策、すなわち株主への利益配分に関する議論です。SBGは6月下旬に1株を2株に株式分割し、今期の年間配当は44円と、分割を考慮すれば前期の2倍に増える見込みです。しかし、一部の株主からは「投資会社として配当性向(利益に対する配当金の割合)が低すぎる」として、増配を求める動議が提出されました。一方で、「配当を出すよりも、その資金を(投資に)運用する方が株主にとって有益だ」として、無配への修正動議を出す株主も現れました。結果としてこれらの動議は否決されましたが、還元策に対する株主の高い関心と、正反対の意見が交わされたことは、SBGにとって今後の対応を一考する必要がある課題を突きつけられたと言えるでしょう。
この総会で孫社長が最も力を入れてアピールしたのは、やはりAI分野への集中投資です。孫社長は、SBGのソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を、「ユニコーン(企業価値が10億ドル超の未上場の成長企業)だけに絞って投資するユニコーン・ハンター」だと表現されました。「私はAI革命の指揮者になりたい。(ユニコーンという)プロの演奏家を集めて楽団を作りたい」という、非常に詩的で魅力的な言葉でその壮大な構想を語っておられます。2017年に設立された約10兆円規模のSVFは、すでに約75社への投資を決定しており、まもなくその投資枠が完了する見通しだとのこと。
孫社長は、SVFの10兆円という規模が、2018年の世界のベンチャーキャピタル(VC)の資金調達総額8.6兆円を上回ることを強調し、その圧倒的な存在感を示されました。さらに、このファンドに出資している投資家への利回り(内部収益率)が45%という驚異的な数字に達していることも明かし、その成功を誇示されました。そして、まもなく2号ファンドを立ち上げ、ファンド担当者を現在の2倍の1,000人体制に増強する計画も明らかにされています。2号ファンドについても、1号と同規模の10兆円を目指し、出資希望者との条件交渉をこれから進めていく段階にあるとしています。
しかしながら、株主からは「ビジョンは素晴らしいが、これからそれをどう着地させるのか、期待と不安が半々だ」といった、未来への懸念をにじませる声も聞かれていました。SBGが投資会社として保有する株式の価値は26兆円にも達していますが、同社の時価総額は10兆円に留まっているのが現状です。市場は、SVFへの巨額投資やスプリントのような大型買収について、投資回収の具体的な道筋、すなわち「出口戦略」をどのように示されるのか、強く注目しています。私は、これだけ巨大なビジョンを掲げ、実行に移す孫社長の実行力と先見性は非常に魅力的だと感じますが、同時に、株主への利益還元とリスク管理のバランスをどう取っていくのかが、今後さらに重要になってくると考えています。
SNSでの反響と市場の注目点
この総会の内容はSNSでも大きな反響を呼んでおり、「孫さんのAIにかける情熱は凄すぎる」「45%の利回りって本当にすごい」といった、孫社長のビジョンやSVFの実績に対するポジティブな意見が多く見受けられました。一方で、「スプリントの合併承認がないと不安」「株価が含み資産に比べて低いのは何故?」といった、経営の不透明さや株主還元の姿勢に対する懸念の声も少なからず投稿されています。SNSの議論からも、SBGの「投資会社」としての今後の成長、特にビジョン・ファンドからの投資先の**IPO(新規株式公開)などによるExit(出口)**戦略に、市場が最大の関心を寄せていることが明らかでしょう。
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