欧州の経済大国ドイツが、再び世界を驚かせる決断を下しました。2019年11月29日、ドイツ連邦議会において2020年の予算案が賛成多数で可決され、メルケル政権が掲げる「シュヴァルツェ・ヌル(黒字のゼロ)」、つまり新規の国債発行に頼らない「借り入れゼロ」の財政方針が7年連続で維持されることになったのです。
今回の予算規模は、前年を1.6%上回る約3620億ユーロ(約43兆円)という過去最大の内容となっています。SNS上では「これだけの歳出を借金なしで賄うのは驚異的だ」という感嘆の声がある一方で、「景気が不透明な中で緊縮にこだわりすぎではないか」といった懸念も入り混じり、国際的な関心が非常に高まっています。
過去最大規模の投資とインフラ刷新への挑戦
2020年予算の目玉は、未来への「投資」に舵を切った点にあります。投資額は2019年比で1割以上も増額され、約429億ユーロが計上されました。これまでドイツは財政の健全化を優先するあまり、公共インフラの老朽化を放置しているという批判を国内外から受けてきましたが、ついに重い腰を上げた形です。
具体的には、道路や鉄道などの交通網の近代化だけでなく、待機児童解消のための保育所整備、さらにはデジタル化を推進するためのインターネット網拡充などが並びます。これらの施策は、停滞気味のドイツ経済に再び活力を与えるための起爆剤として、大きな期待が寄せられているといえるでしょう。
また、アメリカからの増額要求が続く国防費や、近年の大きな課題である移民への治安対策、さらには地球温暖化防止に向けたガス排出削減対策にも多額の資金が投じられます。これらの膨大な支出を支えるため、政府は過去の難民危機時に積み立てていた約106億ユーロの準備金を取り崩すという、緻密な資金繰りを見せています。
財政の番人と経済の先行き
ここで注目すべきは、欧州中央銀行(ECB)などの国際機関から「もっと積極的な財政出動を」と求められながらも、メルケル政権が「借金ゼロ」という一線を死守したことです。財政規律を重んじる姿勢はドイツの誇りでもありますが、このこだわりが経済成長のブレーキにならないか、まさに正念場を迎えています。
ショルツ財務相にとっても、今回の予算成立は大きな意味を持ちます。彼は連立与党・社会民主党(SPD)の党首選を控えており、2019年11月30日の結果発表に向けて、この予算案の可決が強力な追い風になることは間違いありません。政治的な駆け引きと経済政策が複雑に絡み合う中、ドイツの舵取りはより一層繊細さを増しています。
私自身の見解としては、ドイツのこの「潔癖」とも言える財政方針は、将来世代に負担を残さないという点では称賛に値すると考えます。しかし、世界経済が不安定な今、必要以上の慎重さは時にチャンスを逃すリスクも孕んでいます。年末に向けてドイツ経済が力強い回復を見せ、この「借金ゼロ」が正解であったと証明されることを切に願っています。
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