中東情勢が新たな局面を迎えています。トルコ政府は2019年11月11日、自国内で拘束していた過激派組織「イスラム国(IS)」の外国人戦闘員について、出身国への送還手続きを正式に開始したと発表しました。この動きは、以前から「トルコはISのホテルではない」と公言してきたエルドアン政権の強い意志を反映したものです。
今回の送還対象としてまず名前が挙がったのは、アメリカとドイツの出身者計2名です。彼らはすでに出国したとされていますが、目的地や移動手段などの詳細は伏せられています。さらに当局は、近くフランスやイタリア、デンマークなど欧州諸国出身の約20名についても、順次退去させる計画を明らかにしており、国際社会に緊張が走っています。
受け入れを拒む欧米諸国と行き場を失う「テロの火種」
かつてシリアやイラクでの戦闘に加わった外国人は4万人を超えると見られており、トルコだけでも約1200人の身柄を拘束しています。しかし、出身国である欧米諸国の反応は冷ややかです。一部の国はISに関与した人物の国籍を剥奪し、再入国を阻止する強硬策に出ています。自国でテロの火種を抱えたくないという心理が働いているのでしょう。
こうした各国の「押し付け合い」が生んだ悲劇的な光景も報じられました。2019年11月11日には、ギリシャ国境付近の緩衝地帯で身動きが取れなくなった男性の姿が映し出されています。トルコが追放し、ギリシャが入国を拒んだことで、まさに「どこの国にも属さない」不安定な存在が放置される異常事態が発生しているのです。
フランスのパルリ国防相は同日、トルコ側の独断とも取れる進め方に強い懸念を表明しました。本来であれば両国間の合意に基づいて慎重に行われるべき引き渡しですが、事前の調整が不十分なまま強行された形です。こうした「乱暴な送還」は、治安維持の観点からも大きなリスクを孕んでいると言わざるを得ません。
編集部が分析する、今回の強制送還がもたらす未来
SNS上では「テロリストが国内に戻るなんて許せない」という不安の声と、「トルコに責任を丸投げするのも筋が通らない」という複雑な意見が対立しています。ISという共通の敵を倒したはずの国際社会が、その「戦後処理」において再び分断されているのは非常に皮肉な状況であり、各国のエゴが見え隠れしています。
筆者は、この問題の根底にあるのは「法の支配」の限界だと考えます。テロリストであっても、自国民である以上は自国の司法で裁くのが本来の筋道です。しかし、安全保障という名の下にその責任を放棄する姿勢は、結果として法の空白地帯を生み、再過激化の温床となるでしょう。欧米諸国は今こそ、この重い課題に正面から向き合うべきです。
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