2019年11月21日、日本の医療界に警鐘を鳴らす非常に興味深い提言がなされました。慶應義塾大学の印南一路教授は、人口減少と疾患構造の変化に直面する現代日本において、これまでの「規模こそ正義」という病院経営のあり方を根本から見直すべきだと主張しています。SNS上でも「地元から大きな病院がなくなるのは不安だが、質の維持には統廃合もやむを得ないのではないか」といった、将来の医療体制に対する切実な反応が相次いでいます。
印南教授が指摘するのは、日本に蔓延する「急性期病院」への過度なこだわりです。急性期とは、病気の発症直後や手術が必要な時期など、集中的な治療を要する状態を指します。しかし、多くの病院がステータスや補助金のためにこの枠組みにしがみついているのが現状です。団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据えると、本当に求められているのは過剰な急性期病床ではなく、生活を支える質の高い「慢性期医療」であることは明白でしょう。
「数」の呪縛を解き放ち、スマートな経営を目指す戦略
病院経営において、病床数が多いほど格が高いという考え方はもはや過去の遺物です。2019年11月21日時点の状況を鑑みれば、あえて規模を縮小する「ダウンサイジング」こそが、生き残りの鍵となります。経営者は、ただ収入を増やすことだけを追うのではなく、無駄を削ぎ落として利益率を高める「高収益化」に目を向けるべきです。実際に稼働していないベッドを返上すれば、看護師の配置基準をクリアしやすくなり、結果として基本診療料の単価アップに繋がります。
さらに、特定の医療機能を「集約化」することも欠かせません。例えば、一人体制で負担の大きい産婦人科医なども、一つの拠点に集まることでチーム医療が可能になります。多くの症例を経験できる環境は、医師の技術向上を促すだけでなく、その病院のブランド力をも高めるでしょう。医療とは本来、合理的な判断が必要な分野であるはずですが、既存の既得権益や感情論がそれを阻んでいる現状は非常に歯がゆいものだと私は感じます。
コンパクトシティー構想と連動した、次世代の医療供給体制
地域の医療体制を再構築する「地域医療構想」を成功させるには、自治体の首長によるリーダーシップが不可欠です。病院の統廃合は、単なる医療の問題ではなく、まちづくりや「コンパクトシティー(生活機能を都心部に集約した都市)」の形成と密接に関係しています。地元の反発を恐れて現状維持を選ぶのではなく、戦略的な「縮退」を進める覚悟が問われているのです。住民が抱く「近くに病院がなくなる不安」も、デジタルの活用や移動型の医療で十分にカバーできるはずです。
これからの公立病院は、巨大な「ハコモノ」を維持することに固執してはいけません。メディカルカーの巡回や訪問診療といった、地域を「点」ではなく「面」で支える柔軟な供給体制への転換が求められています。世界に誇る日本の国民皆保険制度や、自由に病院を選べるフリーアクセスを未来へ繋ぐためには、痛みを伴う改革から目を逸らしてはなりません。今、私たちに必要なのは、医療の「突然死」を防ぐための知恵と、変革を受け入れる勇気なのです。
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