かつて高度経済成長の象徴でもあった大規模な公団住宅が、今や多文化共生の最前線となっていることをご存じでしょうか。2019年11月09日、埼玉県川口市にある「芝園団地」の驚くべき現状を描いたルポルタージュ『芝園団地に住んでいます』が注目を集めています。
完成から40年以上が経過したこの団地では、5000人近い居住者のうち、今や半数以上が中国人をはじめとする外国人で占められているのです。SNS上では「身近な場所でこれほど変化が進んでいるとは驚きだ」「ゴミ出しや騒音問題など、実際の生活はどうなっているのか気になる」といった、現場の真実を知りたいと願う声が数多く寄せられています。
記者が飛び込んだ「隣人」の素顔と揺れ動く日本人の心
本書の著者である大島隆氏は、一人の新聞記者であると同時に、この団地に身を置く一人の住民でもあります。著者は自治会の活動や夏祭りの運営といった日常の営みに深く入り込み、外国人住民が抱く切実な本音や、そこに生まれるささやかな交流を丁寧な筆致で書き綴っているでしょう。
とりわけ本書が鋭く切り込んでいるのは、急速に多国籍化が進む地域で暮らす日本人が抱く「感情」の機微です。単なる理屈や理想論ではなく、生活の場を共有することで生じる戸惑いや不安、そしてそれらを乗り越えようとする葛藤に焦点を当てた記述は、読む者の心に深く響くに違いありません。
編集者としての意見を言わせていただければ、この団地の姿は決して特殊な事例ではなく、日本の近未来を映し出す鏡だといえます。制度としての「多文化共生」を語る前に、まずは隣に住む人の顔を見ることの大切さを、この本は教えてくれます。言葉の壁や文化の違いを超えて手を取り合うヒントが、この芝園団地の日常には詰まっているのではないでしょうか。
コメント