北陸に冬の訪れを告げるズワイガニ漁が、2019年11月06日にいよいよ解禁されました。カニの本場として知られる福井県では、2015年から開始された最高級ブランド「極(きわみ)」の展開において、産地の威信をかけた熱い攻防が繰り広げられています。この「極」に認定されるためには、茹でる前の重さが1.5キログラム以上、甲羅の幅が14.5センチメートル以上といった、極めて高いハードルを越えなければなりません。
昨シーズンの実績を振り返ると、全漁獲量約27万匹のうち「極」の称号を得られたのは、わずか87匹という驚きの数字でした。割合にすると全体のわずか0.03%という、まさに「選ばれしカニ」なのです。1匹あたり40万円以上の高値がつくこともあるこのブランドですが、2019年11月09日現在の初セリでは、なんと認定数「ゼロ」という厳しい幕開けとなりました。基準を満たすサイズはあっても、プロの目が妥協を許さなかったのです。
これほどまでに選別が厳格化した背景には、2018年にカニとして全国で初めて農林水産省の「地理的表示保護制度(GI)」に登録されたことがあります。GIとは、特定の産地ならではの特性を持つ産品を国が知的財産として守る仕組みです。この登録により、越前ガニには特別なGIマーク付きのタグが許されました。産地の誇りを背負ったことで、「中途半端なものは出せない」という漁師や仲買人のプロ意識が一段と研ぎ澄まされたのでしょう。
SNS上では「0.03%という希少価値にロマンを感じる」「1匹40万円は驚きだが、それだけのプライドが詰まっている証拠だ」といった感心の声が相次いでいます。一方で、あまりの少なさに「一度は実物を見てみたいが、高嶺の花すぎる」といった溜息混じりの反響も見られます。産地側も、爪の先のわずかな欠けで不採用となる現状に、品質と供給量のバランスという「ブランド化のジレンマ」に直面しているようです。
メディア編集者としての私見ですが、この徹底した「引き算」の美学こそが、日本の食文化を世界に知らしめる武器になると確信しています。安易に基準を下げて流通量を増やすのではなく、あえて「ゼロ」という結果を受け入れる勇気が、ブランドへの絶対的な信頼を生むからです。2019年現在の厳しい選別を経て、今シーズンは一体何匹の「極」が食卓に並ぶのか。最高の一匹を追い求めるプロたちの挑戦を、私たちは敬意を持って見守りたいものです。
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