ビジネスの現場において、膨大なデータから価値を導き出す「データサイエンティスト」の存在感は日に日に増しています。2019年11月12日に発表された「日経スマートワーク経営調査」の結果によれば、この高度IT人材を外部に頼るだけでなく、社内でゼロから育成しようと試みる企業が26.1%に達したことが分かりました。これは2018年度の前回調査から3.6ポイントも上昇しており、自社のビジネスを熟知した社員に専門スキルを習得させたいという企業の強い意志が感じられます。
データサイエンティストとは、統計学やAIなどの専門知識を駆使して、複雑なデータをビジネスの課題解決に役立てる専門家のことを指します。SNS上では「ついに企業が本腰を入れたか」といった驚きの声や、「社内の事情に詳しい人が分析する方が実効性が高い」といった内製化を支持する意見が多く見受けられました。一方で、正社員100人あたりの人数は平均してわずか0.4人にとどまっているのが現状です。多くの企業がまだ手探りの状態にある中で、人材確保の競争は一段と激しさを増しています。
日立製作所が挑む3000人体制への巨大プロジェクト
こうした人材育成の流れを力強く牽引しているのが、日本を代表する電機メーカーの日立製作所です。2019年11月12日現在、同社にはすでに1000名ものデータサイエンティストが在籍しており、工場の設備故障を事前に察知する高度な技術開発などに貢献しています。さらに驚くべきことに、彼らは2022年3月31日までにその人数を3000名にまで拡大する野心的な計画を掲げているのです。この目標達成のために「日立アカデミー」という独自の研修機関を活用し、会社負担で学べる環境を整えています。
専門的なデータ活用の基礎から、現場特有の生きたデータを解析する手法まで、理論と実践の両面をカバーする教育体制は他社の追随を許しません。私は、このように企業が教育コストを肩代わりしてでも「育てる」姿勢を見せることは、日本の産業競争力を復活させる鍵になると確信しています。外部から高給で引き抜くだけでは限界があり、自社の文化や製造現場の特性を理解した人材にITの武器を持たせることこそが、真のDX(デジタルトランスフォーメーション)を成功に導く最短ルートではないでしょうか。
今回の調査では、テクノロジー部門で偏差値75以上という驚異的なスコアを叩き出した最上位ランクの企業17社も公表されました。データ分析の専門家を「10人から20人」抱える企業はまだ全体の0.3%とわずかですが、今後は日立のような先行事例を追って、多くの企業が独自の育成カリキュラムを構築していくはずです。デジタル変革の波に乗り遅れないよう、私たち一人ひとりもまた、こうした企業の動向を注視し、自らのスキルセットを見つめ直す時期が来ていると言えるでしょう。
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