2019年11月12日のニューヨーク株式市場は、投資家の熱狂に包まれています。前日のダウ工業株30種平均は、一時的な下落を跳ね返し、見事に史上最高値を更新しました。現在は「リスクオン」、つまり投資家が果敢に利益を狙い、株式などの資産に資金を投じやすい絶好の地合いと言えるでしょう。
こうした強気相場の裏側で、ある指標が異様な動きを見せています。投資家の不安心理を数値化した「VIX指数」が12台まで低下し、2019年内の最低水準に迫っているのです。この指数は、株価の先行きに警戒感が強いほど数値が上がるため、別名「恐怖指数」とも呼ばれています。
市場では今、この「恐怖心」を売る取引が空前のブームとなっています。VIX先物を売り立てる投機筋のポジションは、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると過去最大を記録しました。この2ヶ月で売り越し幅は倍増し、20万枚という未踏の領域に突入しているのです。
VIXショックの再来か?楽観論に潜む魔物
SNS上でも「今は買い時だ」という声が溢れる一方、一部の冷静な投資家からは「嵐の前の静けさではないか」という懸念も漏れ聞こえます。実際、過度な楽観はしばしば残酷な反動を招きます。専門用語で言えば、市場に「逆回転」のエネルギーが溜まっている状態なのです。
ここで「デリバティブ」という言葉を整理しておきましょう。これは株式や債券から派生した金融商品のことで、少ない資金で大きな取引ができるのが特徴です。VIX先物はこの一種であり、相場が安定していれば利益が出ますが、急落時には損失が無限に膨らむ危うさを秘めています。
過去を振り返れば、2018年2月の「VIXショック」が教訓となります。今回と同様に市場が落ち着き払っていた矢先、プログラム取引の連鎖によって、わずか15分でダウ平均が800ドル超も急落しました。積み上がった「売り」の解消が、さらなる暴落を呼ぶ悪循環に陥ったのです。
編集部としては、現在の米中貿易交渉への過度な期待に警鐘を鳴らしたいと思います。2019年11月8日、トランプ大統領は中国側との関税撤廃合意を否定する発言を残しました。大統領の「一言」で、積み上がった楽観の砂の城が崩れ去るリスクは常に念頭に置くべきでしょう。
株式市場が絶好調なときほど、トランプ氏は交渉相手に対して強気な態度に出る傾向があります。現在の「恐怖の欠如」は、裏を返せば不測の事態への備えが疎かになっている証左かもしれません。最高値更新のニュースに踊らされず、足元の「マグマ」を注視する必要がありそうです。
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