【ビッグデータ無料開放】三井住友海上が1.5億件の「宝の山」をシェア?2019年6月の決断がビジネスを変える理由

「データは21世紀の石油である」。そんな言葉がビジネス界を席巻して久しいですが、まさにその「石油」を惜しみなくパートナーに提供するという驚きのニュースが、2019年5月29日に飛び込んできました。三井住友海上火災保険が、同年6月から自社で保有する膨大な保険データを、取引先企業へ無償で提供するサービスを開始したのです。その数はなんと約1億5000万件。自動車保険や火災保険など、日本中のリスクと契約情報が詰まった巨大なデータベースです。

このサービスの肝は、単にデータを渡すだけではない点にあります。顧客である自動車販売店や不動産会社の要望に合わせて、「使える形」に加工して提供されるのです。例えば、「特定の地域でハイブリッド車(HV)がどれくらい普及しているか」「耐火構造ではない住宅がどこに多いか」といった情報が地図上で可視化されれば、販売戦略は劇的に変わるでしょう。経験や勘に頼っていた営業活動が、確固たる根拠に基づいたデータマーケティングへと進化する瞬間です。

当時、SNS上ではこの発表に対し、「無料でここまでやるのか」「ビジネスチャンスが広がる」という期待の声が上がりました。一方で、「個人情報は大丈夫なのか?」というプライバシーへの懸念も当然のように囁かれました。しかし、提供されるのはあくまで統計化されたデータであり、個人が特定されることはありません。情報の匿名性を担保しつつ、ビジネスの種として活用するバランス感覚こそが、これからの企業に求められるリテラシーだと言えます。

三井住友海上はこの取り組みのために、データの分析官である「データサイエンティスト」を2019年度中に7人から10人に増員する計画を立てていました。さらに、コンサルティング大手のアクセンチュアとも連携し、分析体制を盤石なものにしています。データサイエンティストとは、混沌とした数字の羅列から「意味」や「価値」を発掘する専門家のこと。彼らの手にかかれば、眠っていた保険データが、企業の未来を照らす羅針盤へと生まれ変わるのです。

私はコラムニストとして、この動きは損害保険業界の役割が大きく変わる転換点だと感じています。これまでの保険会社は「万が一の時に金銭を支払う場所」でしたが、これからは「事故やリスクを未然に防ぎ、ビジネスを成功に導く情報参謀」へと進化していくはずです。他業界に比べて圧倒的な母数を持つ損保データの活用は、日本経済全体の生産性を底上げする起爆剤になる可能性を秘めています。

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