米中貿易摩擦の逆風に耐えられるか?成長目標達成を狙うフィリピン経済の現在地と課題

2019年11月13日、東南アジアの成長株として注目されるフィリピン経済に、米中貿易摩擦という巨大な影が忍び寄っています。これまで勢いのあった輸出が目に見えて鈍化し、企業の設備投資も足踏み状態にあるなど、経済の現場からは悲鳴に近い声が聞こえてきそうです。

SNS上では、現地のビジネスマンから「工場の稼働率が明らかに落ちている」「外資の進出が慎重になっている」といったリアルな懸念が広がっています。世界経済の先行きの不透明さが、フィリピンの成長シナリオを大きく狂わせているのは間違いありません。

2019年7月から9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、3期ぶりに6.2%という高い水準まで回復を見せました。GDPとは、国内で一定期間に生み出された付加価値の合計で、その国の経済パワーを測る最も重要な指標の一つとして知られています。

ドゥテルテ政権は通年の成長率目標として6%から7%を掲げており、国家経済開発庁のペルニア長官も目標達成に自信をのぞかせました。しかし、専門家の間では「この状況での目標達成は、かなり険しい道のりになる」との慎重な見方が大勢を占めています。

かつて2015年10月から12月期には10%を超えていた輸出の伸びが、2019年に入ると1桁台にまで急落してしまいました。特に直近の2019年7月から9月期はほぼ横ばいとなっており、主力の電子部品需要が世界的に落ち込んだ影響をまともに受けています。

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構造的な課題と外資の動向が鍵を握る

フィリピンの弱点は、アジアのサプライチェーンに深く食い込めていないという点にあります。サプライチェーンとは、製品の原材料調達から製造、販売までをつなぐ「供給網」のことですが、この網から外れているため、米中摩擦による直接的な打撃は比較的少ないと言えます。

しかし、中国から生産拠点が移転してくるような恩恵も、周辺国に比べて期待しにくいのが現状でしょう。アジア開発銀行の試算でも、他国に比べてポジティブな影響が薄いことが示されており、産業基盤の脆弱さがここにきて露呈した形となりました。

また、政府が外資向けの輸出優遇策を大幅に縮小する方針を打ち出したことで、企業の意欲が削がれています。実際にインドのIT大手は、事業の拡張計画を棚上げする決断を下しました。こうした動きは、中長期的な成長に大きなブレーキをかけかねないと私は危惧しています。

深刻なのは制度面だけではなく、物理的なインフラの遅れも深刻なボトルネックとなっています。マニラ市内の港湾や道路の渋滞は年々悪化しており、物流コストの増大が企業の競争力を奪っている事実は、もはや見過ごせないレベルに達しているのではないでしょうか。

内需や政府支出が下支えをしている今のうちに、いかにして外資を呼び戻し、産業の多角化を進められるかが正念場です。ドゥテルテ政権が「成長の黄信号」をいかにして青信号に変えていくのか、今後の具体的で迅速な政策運営に世界中の投資家が注目しています。

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