タイヤ業界を牽引する国内主要4社の、2019年1月から9月期における連結決算が2019年11月12日にすべて出そろいました。発表された内容は、残念ながら非常に厳しい現実を突きつけるものとなっています。全社が2019年12月期の通期利益見通しを引き下げる「下方修正」を発表しました。当初の期待とは裏腹に、世界経済の荒波が各社の収益を大きく圧迫している実態が浮き彫りになったのです。
SNS上では、このニュースを受けて「車が売れていない影響がここまできているのか」「景気の減速を肌で感じる」といった不安の声が広がっています。また、投資家の間でも「タイヤは景気の先行指標」という認識が強まっており、今後の動向を注視する書き込みが相次いでいます。なぜ、これほどまでに利益が削られてしまったのでしょうか。その最大の要因は、世界経済の心臓部の一つであるアジア市場の深刻な落ち込みにあります。
特に大きな影を落としているのが、泥沼化する米中貿易摩擦です。世界を代表する二大経済圏の対立によってアジア全体の景況感、つまり「経済的な体感温度」が急激に冷え込んでしまいました。その影響で新車販売が振るわず、タイヤの需要も低迷しています。さらに、想定以上の「円高」が追い打ちをかけました。海外で稼いだ外貨を日本円に戻す際、円高だと目減りしてしまうため、輸出企業には極めて不利な状況が続いているのです。
アジア市場の現状について、最大手のブリヂストンは驚きの推計を公表しました。2019年の乗用車向け新車用タイヤの販売本数は、なんと前年比で1割も減少する見通しだといいます。わずか数ヶ月前までは「横ばい」と予想していたことを考えると、中国の景気減速がいかに急速にインドやタイといった周辺国へ波及したかが分かります。需要が激減すれば、工場の稼働率も下がり、製品ひとつあたりのコストが跳ね上がる悪循環に陥ります。
ブリヂストンは今回、通期の営業利益見通しを450億円も下方修正し、3300億円としています。同社の菱沼直樹CFO(最高財務責任者)が「回復の目処が立たない」と漏らすほど、現場の危機感は切実なものです。私個人としては、今回の決算は単なる一業界の不振ではなく、製造業全体のサプライチェーンが直面している構造的なリスクを象徴していると感じます。単一の市場に依存しすぎることの危うさが、改めて露呈した形ではないでしょうか。
横浜ゴムも同様に、事業利益の見通しを大幅に下方修正しました。中国市場での新車向け販売が振るわず、現地工場の稼働率低下が収益を直撃しています。また、住友ゴム工業も為替レートの見直しを余儀なくされました。1ドル=110円から109円へと円高方向へ修正したことは、わずかな差に見えて巨額の利益を吹き飛ばす重みを持ちます。TOYO TIREに至っては、北米の市販用や国内の生産コスト増といった独自の課題も抱えています。
この苦境は日本企業に限った話ではありません。フランスのミシュランや米国のグッドイヤーといった世界的な競合他社も、アジアや欧州での販売減少に苦しんでいます。世界中の足元を支えるタイヤ業界がこれほど苦戦している事実は、世界経済全体が踊り場、あるいは後退局面に入りつつあるサインかもしれません。私たちは今、かつての成長モデルが通用しない、不透明な時代の曲がり角に立たされていると言えるでしょう。
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