サウジアラビアの国営石油巨大企業、サウジアラムコがいよいよ新規株式公開(IPO)へと動き出しました。2019年12月に予定されている一部株式の上場が実現すれば、市場始まって以来の最大規模になると目されています。しかし、この華々しいマネーの祭典の裏側には、世界経済を揺るがしかねない米国と中国の激しい摩擦が隠れているのです。
そもそもIPOとは、未上場の企業が初めて株式を証券市場に公開し、誰でも売買できるようにすることを指します。今回のプロジェクトは、サウジの実質的な支配者であるムハンマド皇太子が主導する「脱石油」に向けた国家改革の柱となっています。改革の軍資金を稼ぐためには、いかに自社の価値を高く見せ、投資家から多額の資金を引き出すかが極めて重要なポイントとなります。
ムハンマド皇太子は自社の企業価値を2兆ドル、日本円にして約216兆円という驚異的な数字で見積もっています。ところが、市場関係者の間ではこの金額はあまりに「強気すぎる」との懐疑的な声が根強く囁かれているのが現状です。SNS上でも「これほどの巨額投資に踏み切るにはリスクが大きすぎるのではないか」といった、先行きを不安視する投稿が目立っています。
揺らぐサウジの安定性と中国の急接近
投資家たちが二の足を踏む背景には、サウジを取り巻く情勢の不安定さがあります。2018年に発生した反体制ジャーナリスト殺害事件や、2019年09月14日に起きた石油施設への攻撃は、国家の信頼性に大きな影を落としました。アラムコ側は海外の投資家に対して必死の説明を続けているものの、政治的リスクを嫌う欧米勢がどこまで本気で資金を投じるかは不透明なままです。
そんな膠着状態の中、驚くべき情報が飛び込んできました。中国の政府系ファンドである「シルクロード基金」や国有石油会社が、アラムコ株への出資に向けて協議を進めているというのです。シルクロード基金とは、中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」を資金面で支える組織であり、単なる投資以上の政治的な意味合いが含まれていることは間違いありません。
中国にとって、アラムコ株の取得はエネルギー資源の安定確保に直結する戦略的な一手と言えるでしょう。また、サウジとの関係を深めることで、中東地域における中国の影響力を一気に拡大させる狙いも透けて見えます。経済合理性を重視する欧米の投資家が撤退すればするほど、結果として中国の存在感が際立つ皮肉な構図が浮かび上がっているのです。
長年サウジと同盟を組んできた米国が、この動きを黙って見過ごすとは到底考えられません。トランプ政権下で激化する米中貿易摩擦に、エネルギー安保という新たな対立軸が加わろうとしています。私は、このIPOが単なる経済ニュースに留まらず、21世紀の国際秩序を占う重大な分岐点になると確信しており、今後の動向から片時も目が離せません。
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