2019年11月20日現在、日本の経済界に大きな緊張が走っています。外国資本による国内企業への投資を制限する「外為法(外国為替及び外国貿易法)」の改正案を巡り、安全保障の強化と自由な投資活動の維持という、相反する課題の間で激しい議論が交わされているためです。自民党内からも、規制が緩ければ悪意ある投資家が流入するという危機感と、外国人投資家の日本離れを招くという懸念が同時に噴出しています。
特に注視されているのは、急速に台頭する中国資本の影響力です。政府関係者の間では、インフラ投資の背後に中国の「フロント企業(実体を隠して活動する企業)」が潜んでいるとの見方が強まっています。こうした動きに対し、米国は2020年2月までにハイテク分野の投資を制限する新法を施行する予定であり、欧州連合(EU)も2019年に規制強化を承認するなど、世界中で「対中包囲網」とも呼べる厳しい枠組みが構築されつつあります。
欧米の「事後介入」と日本の「事前網掛け」が抱えるジレンマ
今回の改正において、日本は同盟国から「安保の抜け穴」にならないよう強く求められています。しかし、規制の手法には欧米との明確な差があるのが現状です。米国などが採用しているのは、投資が実行された後に問題があれば介入する「事後介入」という仕組みです。これは、強力な「インテリジェンス(高度な情報収集・分析能力)」を武器に、国益を脅かす特定の投資家だけを狙い撃ちにする非常に高度な手法と言えるでしょう。
一方で日本は、特定の業種に対して幅広く事前に届け出をさせる「事前網掛け」のスタイルを採っています。これは情報網が未成熟な中での苦肉の策とも言えますが、結果として安全保障上の懸念が少ない善意の投資家までも一律に規制の対象に含んでしまうリスクを孕んでいます。形式的な透明性を重視しすぎるあまり、本来歓迎すべき資金の流入まで阻害してしまっているのではないか、という疑念は拭い去ることができません。
SNS上では「国の守りを固めるのは当然だが、手続きが煩雑になりすぎれば日本市場の魅力がなくなる」といった、投資家サイドからの冷ややかな声も目立ちます。実際に2019年1月から6月のデータでは、中国企業による海外でのM&A(合併・買収)は前年比で4割以上も激減しました。世界的な規制強化の波は、確実にマネーの流れを変えつつあり、日本もその荒波の真っ只中に立たされているのです。
経済の活力と防衛のバランスをどう描くか
日本の対内直接投資残高がGDPに占める割合は、2019年時点でもわずか5.6%と、先進国の中で最低水準に甘んじています。人口減少によって経済の活力が失われつつある日本にとって、海外からの健全な投資を呼び込むことは火急の課題です。安全保障を守るための壁を高くしすぎれば、自らの首を絞めることになりかねません。今後は、単なる欧米の追随ではない、日本独自のバランス感覚が求められます。
私は、今回の法改正を単なる「規制」として捉えるべきではないと考えます。むしろ、どの投資が「善」で、どの投資が「リスク」なのかを明確に峻別できる高度な情報機関の設立こそが、日本が真の投資大国になるための条件ではないでしょうか。一律に門を閉ざすのではなく、開かれた窓から入ってくる風を正しく見極める眼を養うこと。それこそが、2019年の日本が直面している真の試練であると確信しています。
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