名古屋名物「きしめん」が復活!新幹線ホームの定番から進化する平打ち麺の魅力とV字回復の秘密

名古屋を訪れる旅人を真っ先に出迎えるのは、新幹線ホームに漂う芳醇な出汁の香りではないでしょうか。2019年11月21日現在、名古屋駅の風物詩として定着している「きしめん」が、かつての苦境を乗り越えて驚異的な復活を遂げています。新幹線や在来線のホームで、忙しなく麺をすする人々の姿は、今や名古屋の活気そのものを象徴する光景と言えるでしょう。

この名物スポット「住よし」を運営するジャパン・トラベル・サーヴィスによれば、1961年に在来線で産声を上げて以来、現在は9店舗で伝統の味を守り続けているそうです。国産のソウダガツオとムロアジから丁寧に引いた出汁は、あめ色に輝き、一口飲めばホッとする安心感を与えてくれます。SNS上でも「名駅に着いたらまず住よし」といった投稿が相次ぎ、その変わらぬ味が多くのファンを魅了しています。

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明治時代から続く伝統と形状に隠された知恵

きしめんの歴史を紐解くと、1888年に発行された文献にはすでにその名が登場しています。文豪・泉鏡花も1902年の著書で、その独特な薄く平らな形状を「他にはない珍しいもの」と賞賛しました。名前の由来は、キジの肉を入れた「きじめん」説や、和歌山から伝わった「紀州麺」説など諸説ありますが、どれもこの地で独自に発展してきた歴史の深さを物語っています。

特徴的な「平打ち麺」という形状は、実は非常に合理的です。麺を薄く平らに加工することで、茹で時間を大幅に短縮できるという利点があります。一説には、1610年から始まった名古屋城の築城に携わる大勢の労働者へ、素早く食事を提供するためにこの形が定着したとも言われています。まさに、せっかちな現代人にも、効率を重視した当時の人々にも合致した機能的なデザインなのです。

絶滅の危機を救った「きぬあかり」と官民の絆

しかし、順風満帆だったわけではありません。1999年には約5100トンあった生産量が、2009年には半分以下の約2200トンまで激減しました。華やかなパスタやラーメン、さらには空前の讃岐うどんブームに押され、古き良ききしめんは「地味な存在」として若者離れが進んでしまったのです。私は、この危機感こそが現在のV字回復を生む原動力になったと確信しています。

この窮地に立ち上がった地元業者たちは、2008年に「きしめん普及委員会」を結成しました。若者の心をつかむため、カレーやエビフライと組み合わせた斬新なメニューを提案し、職人による出前授業で次世代への継承に努めています。さらに愛知県が2011年に登録した新品種の小麦「きぬあかり」は、美しい色艶と強いコシを実現し、きしめんの品質を劇的に向上させる救世主となりました。

こうした官民一体の努力が実を結び、2018年の生産量は4500トンにまで回復しました。古きを守りつつ、時代のニーズに合わせて進化を厭わない姿勢こそ、文化を存続させる唯一の道でしょう。うどん界の王者・讃岐を追う立場から、世界に誇る「NAGOYA」の看板メニューへ。今まさに再注目を浴びているきしめんを、あなたもその舌で確かめてみませんか。

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