地球温暖化による未曾有の危機が叫ばれる中、科学の力で直接的に気温上昇を抑え込もうとする「気候工学(ジオエンジニアリング)」という挑戦的な試みに注目が集まっています。米ハーバード大学のデビッド・キース教授は、成層圏に特殊な微粒子を散布して太陽光を反射させ、地表の温度を下げる「ソーラー・ジオエンジニアリング」の研究の必要性を強く訴えています。この革新的なアイデアは、深刻化する気象災害を防ぐための切り札になる可能性を秘めているのです。
しかし、この手法は自然の摂理を人工的に操作するという性質上、これまで議論自体がタブー視される傾向にありました。安易な気温低下に頼ることで、本来優先すべき二酸化炭素の排出削減への意欲を削ぐ「道徳的ハザード」が危惧されるからです。SNS上でも「人類が神の領域に踏み込むのは恐ろしい」といった不安の声や、「背に腹は代えられないほど事態は深刻だ」という賛否両論の意見が飛び交い、世界中で激しい議論を巻き起こしています。
究極の選択を迫られる現代社会のリスク管理
2019年11月21日現在、各国が目標とする温暖化ガスの削減努力を継続したとしても、今世紀末には産業革命前と比較して世界の平均気温が3度以上も上昇する可能性が極めて高いと予測されています。このままでは巨大台風の襲来や海面の上昇、猛烈な熱波といった脅威から逃れることは困難でしょう。キース教授は、気候工学を削減努力の代替品としてではなく、あくまでリスクを軽減するための補完的な手段として位置づけるべきだと説いています。
一方で、太陽光を遮ることで降雨パターンが変化し、予期せぬ干ばつを招くといった「副作用」への懸念も拭えません。東京大学未来ビジョン研究センターの杉山昌広准教授は、現時点では導入の是非を論じるにはあまりに情報が不足しており、まずは慎重な研究を積み重ねる段階であると指摘しています。このように、科学界でも「期待」と「慎重論」が複雑に交錯しており、まさに人類の知恵が試されている局面と言えるでしょう。
二酸化炭素を資源に変える驚異のビジネスモデル
デビッド・キース教授は研究者としての顔だけでなく、二酸化炭素を直接回収するベンチャー企業「カーボン・エンジニアリング社」の創設者としての側面も持っています。この企業が取り組む「ダイレクト・エア・キャプチャ(DAC)」と呼ばれる技術は、大気中から二酸化炭素を取り込み、それを水素と組み合わせて航空燃料などの「合成燃料」へと生まれ変わらせるものです。これは排出されたガスをただ埋めるのではなく、資源として循環させる夢のような仕組みです。
この手法の優れた点は、広大な農地を必要とするバイオ燃料に比べて環境負荷を低く抑えられる可能性が高いことです。2019年11月21日の時点で、太陽光発電などの再生可能エネルギーを効率的に活用することで、持続可能なエネルギー社会の構築を目指す動きが本格化しています。気候を直接制御する大胆な発想と、着実に排出を抑える技術革新。私たちは今、この二つの車輪を回しながら、未来の地球を守るための境界線に立っているのです。
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