2019年11月22日、イギリスの政界に激震が走っています。最大野党である労働党のジェレミー・コービン党首は、同年12月12日に控えた総選挙に向けたマニフェスト(政権公約)を堂々と発表しました。その内容は「希望のマニフェスト」という言葉にふさわしく、国民の生活を根本から変えようとする野心に満ちたものです。
今回の公約で最も注目を集めているのは、迷走を続ける欧州連合(EU)離脱問題への対応でしょう。労働党は、政権獲得から6カ月以内に2度目の国民投票を実施することを正式に表明しました。これは、現在のジョンソン政権が進める離脱案に代わる「新たな離脱案」か、あるいは「EU残留」かを国民に再び問うという、民主主義の再確認とも言える提案です。
しかし、党内が残留派と離脱派で二分されている影響もあり、労働党自身が離脱そのものに賛成か反対かという明確な立場を示さなかったことは、SNS上でも「どっちつかずだ」といった厳しい声が目立ちます。一方で、強引な離脱に不安を感じる層からは、慎重な再交渉を求める姿勢に一定の理解を示す意見も見受けられ、世論の反応は真っ向から分かれています。
インフラ革命?ブロードバンド無料化と国有化への舵切り
離脱問題以上に驚きを持って迎えられたのが、2030年までにイギリス全土で光回線のブロードバンド網を無料開放するという大胆な政策です。これは通信大手BTグループの一部を国有化し、巨大IT企業への課税を強化することで財源を確保する計画となっています。インターネットを「基本的人権」のような公共財と捉える、非常に先進的な試みです。
さらに、水道や鉄道、郵便事業といった生活に直結するサービスの国有化も掲げられました。これは、民営化によって上昇した利用料負担を軽減し、国民の手にインフラを取り戻そうとする左派的な色彩が強い政策です。コービン氏はこの変革こそが英国の未来を救うと訴えていますが、市場経済を重視する層からは財源確保の実現性を疑問視する声も上がっています。
私個人の見解としては、このマニフェストは「分断された英国」を経済的な再分配で繋ぎ止めようとする必死の試みだと感じます。特にブロードバンドの無料化は、格差社会における教育や情報の平等を実現する可能性を秘めています。ただ、離脱問題で曖昧な態度を貫くことが、保守党に10ポイント以上のリードを許している現状を打破する決定打になるかは未知数です。
2019年11月22日現在の支持率は30%前後と、与党・保守党の後塵を拝している労働党ですが、この「劇薬」とも言える公約が、選挙戦最終盤で有権者の心をどれだけ掴めるのか。国民医療制度(NHS)の拡充や大規模なインフラ投資など、生活に密着した訴えがどこまで浸透するか、運命の12月12日まで目が離せません。
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