2019年11月25日現在、アメリカの外交がかつてないほどの危機に直面しています。その中心にいるのが、トランプ大統領の忠実な腹心として知られるマイク・ポンペオ国務長官です。今、彼を巡る状況は、まさに「外交の崩壊」を象徴する事態へと発展しています。発端はトランプ大統領に対する弾劾調査でしたが、そこから見えてきたのは、私利私欲にまみれた歪な外交の姿でした。
弾劾(だんがい)調査とは、大統領などの公職者が義務に違反した際、その罷免を求めて議会が行う手続きを指します。今回の騒動では、ソンドランド駐欧州連合(EU)大使が議会で驚くべき証言を行いました。ポンペオ氏が、ウクライナから政治的な支援を引き出すための企てを「常に把握していた」と暴露したのです。これまで政権側は「側近が勝手にやったこと」と主張してきましたが、その言い逃れはもはや通用しません。
ポンペオ氏は、シリアでの停戦交渉やイランへの対応など、あらゆる場面でトランプ氏の指示に忠実に従い続けてきました。しかし、その過剰なまでの忠誠心が、米国の外交を司る「国務省」という組織を内側から破壊しているとの批判が絶えません。SNS上でも「プロの外交官を盾にせず、切り捨てる長官に未来はない」といった、現場の士気低下を危惧する声が数多く上がっています。
特に深刻なのは、自身の部下である外交官たちが窮地に立たされた際、ポンペオ氏が彼らを守ろうとしなかった点です。マリー・ヨバノビッチ元駐ウクライナ大使らの証言により、その冷淡な対応が明るみに出ました。バーンズ元国務副長官は、この惨状を「官僚機構への放火」とまで表現しています。組織を率いるリーダーが自らその基盤を焼き払うような行為は、到底受け入れられるものではありません。
内政の混乱は、そのまま対外政策の機能不全を招いています。イスラエルのヨルダン川西岸での入植活動を容認する姿勢や、韓国への過度な駐留経費負担の要求など、現在の米国は国際的な協調よりも目先の利益や政治的なパフォーマンスを優先しているように見えます。本来、外交は国の長期的な国益を守るためのものであるべきですが、今は大統領個人の政治目的を達成するための道具に成り下がっています。
私は、外交に私情や内政の都合を持ち込みすぎる現状に強い危機感を抱いています。かつての米国には、党派を超えて国益を守る「外交の品格」がありました。しかし、ポンペオ氏が体現する現在の姿は、世界に対する責任を放棄した孤立主義への道に見えてなりません。ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアのプーチン大統領に接近し始めている事実は、米国がもたらした真空地帯を他国が埋め始めている証拠でしょう。
今、ポンペオ氏は「身を引いて名誉を守るか、このまま沈みゆく泥舟に残るか」という過酷な選択を迫られています。2019年12月にはロシアとウクライナの首脳会談も予定されていますが、主役であるはずの米国の影は薄くなる一方です。一度壊れた信頼と外交秩序を取り戻すには、相当な時間がかかるでしょう。私たちは今、一つの帝国の外交が変質していく歴史的な分岐点を目撃しているのかもしれません。
コメント