日常の喧騒から離れて、ただ地面に目を向ける贅沢な時間を過ごしてみませんか。2019年11月30日に紹介する中公文庫の新刊『いい感じの石ころを拾いに』は、エッセイストの宮田珠己氏が綴る、少し変わった、けれど最高に魅力的な旅の記録です。本書がテーマとしているのは、高価な宝石の発掘ではありません。海岸や河原に転がっている、自分にとって「なんだかいいな」と感じる石を拾い集める、究極に自由な遊びなのです。
著者は、新潟県のヒスイ海岸や静岡県の御前崎といった石の名所へ、わざわざ足を運びます。そこで探すのは、金銭的な価値がある石ではなく、自分の感性にピタリと重なる、色合いや手触りを持つ石たちです。この「石拾い」という行為は、専門的には「ロックバランシング」や「ビーチコーミング」に近い側面もありますが、宮田氏の手にかかれば、もっと肩の力が抜けた、無心になれる癒やしのエンターテインメントへと変貌を遂げます。
SNSで話題!「無心になれる」石拾いの奥深い世界
SNS上では、この本をきっかけに「自分も石を拾いに行きたくなった」という声が続出しています。「ただの石ころが宝物に見えてくる不思議な一冊」という感想や、「目的のない旅の楽しさを教わった」といった反響が広がっているのです。情報過多な現代において、ただ足元の石を見つめるというシンプルな行為が、多くの人の心に深く刺さっているのでしょう。宮田氏が各地で出会う「石を愛する人々」との交流も、物語に温かな彩りを添えています。
ここで言う「石拾い」とは、地質学的な知識を競うものではなく、自分の内面と向き合う対話のようなものです。例えば、波に洗われて丸くなった石の曲線に美しさを見出したり、地味な灰色の石に刻まれた繊細な模様に感動したりする時間は、何物にも代えがたい豊かさを提供してくれます。読者はページをめくるごとに、著者のユーモラスな筆致に誘われ、自分だけの「運命の一石」を探しに行きたいという衝動に駆られるはずです。
私自身の視点から述べさせていただくと、効率性が重視される社会において、こうした「役に立たないこと」を全力で楽しむ姿勢こそが、今もっとも求められている文化的なゆとりではないかと感じます。1冊780円という手頃な価格で、読者を未知なる冒険へ連れ出してくれる本書は、最高のコストパフォーマンスを誇る癒やしアイテムです。今度の週末は、この本を片手に、最寄りの河原や海岸へ「いい感じの石」を探しに出かけてみてはいかがでしょうか。
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