2019年11月30日、ついに新しい時代の幕が開けました。2020年東京五輪・パラリンピックのメインステージとなる「新国立競技場」が、着工から約3年の月日を経て堂々の完成を迎えたのです。
明治神宮外苑の緑に溶け込むようなこのスタジアムは、まさに「杜(もり)のスタジアム」と呼ぶにふさわしい佇まいを見せています。軒庇(のきびさし)に整然と並ぶ木材は、見る者に温もりと親しみを感じさせるでしょう。
SNS上では、早速その外観を収めた写真が拡散されており、「日本の美学が詰まっている」「木の香りがしてきそう」といった称賛の声が相次いでいます。都会の真ん中に現れたこの巨大な木造美は、多くの人の心を掴んでいるようです。
一方で、この壮大なプロジェクトには、国内最高の1569億円という莫大な整備費が投じられました。この金額は過去の国内スタジアムと比較しても類を見ない規模であり、建設過程ではそのコストが大きな議論の的となってきました。
受け継がれるデザインと巨額コストの背景
この競技場は、日本を代表する建築家の隈研吾氏らが手がけました。当初のデザイン案が撤回されるという異例の事態を経て誕生した経緯があり、まさに紆余曲折の末に辿り着いた、国民にとって待望の完成と言えるでしょう。
1000億円の大台を優に超えた背景には、すり鉢状の3層スタンドといった高度な構造美だけでなく、震災復興に伴う資材費や人件費の高騰という、現代日本が直面している切実な経済状況が色濃く反映されています。
また、年間の維持管理費は約24億円に達すると試算されています。この巨大な施設を「負の遺産」にしないためには、大会が終わった後の「レガシー(後世に受け継がれる有形・無形の遺産)」としての価値をいかに高めるかが重要です。
大会後は運営権を民間へ売却する方針ですが、コンサートなどの収益源となるイベント活用には課題も残ります。コスト削減のために開閉式屋根が断念されたため、天候や音漏れへの対策が運用の鍵を握ることになるでしょう。
スタジアムから始まる「面」のまちづくりへ
これからのスタジアム経営は、建物単体の「点」で考えるのではなく、周辺の商業施設やホテルと連携した「面」での賑わい創出が不可欠です。神宮外苑エリアでは、今後さらに大規模な再開発が予定されており、期待が膨らみます。
個人的な意見ですが、この場所が単なるスポーツ施設に留まらず、週末に家族で訪れたくなるような市民の憩いの場として定着することを切に願います。ハード面が完成した今、次はソフト面を充実させる「知恵」の見せどころです。
2020年の感動を一時的なものに終わらせず、10年後、20年後も「あって良かった」と誇れる場所になるかどうか。それは、私たちのこれからの活用次第であり、新国立競技場の真の挑戦は、今ここから始まるのです。
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