北海道の拠点都市、札幌の住宅事情に大きな変化が訪れています。総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」の結果によれば、2018年10月01日現在の札幌市内における空き家数は12万5400戸となりました。住宅総数に占める空き家の割合を示す「空き家率」は11.9%を記録しています。驚くべきことに、1993年以降ずっと右肩上がりだったこの数値が、今回25年ぶりに低下へと転じたのです。
この歴史的な減少の背景には、法改正と新しい宿泊スタイルの浸透が深く関わっています。空き家と一言で言っても、実は「賃貸用」「売却用」「二次的住宅(別荘など)」「その他」の4つのカテゴリーに分類されます。今回の調査では、札幌市の住宅総数105万1400戸のうち、空き家が前回から1万6000戸以上も減少しました。特に賃貸用物件が約3万件も減ったことが、全体の数値を大きく押し下げる要因となったようです。
空き家対策特別措置法の威力と「特定空き家」の正体
空き家減少の大きな推進力となったのが、2015年に全面施行された「空き家対策特別措置法」です。この法律は、適切に管理されていない物件に対して自治体が厳しい措置を取れるようにしたものです。特に、そのまま放置すると倒壊の恐れがあったり、衛生上著しく有害だったりする物件は「特定空き家」に指定されます。指定を受けると、土地にかかる固定資産税の優遇措置が受けられなくなり、税負担が最大で6倍にまで跳ね上がる可能性があるのです。
SNS上では「実家が空き家なので他人事ではない」「税金が上がるのは怖すぎる」といった、所有者たちの切実な声が目立ちます。放置すれば資産どころか大きな負債になりかねないという現実が、多くの人を行動へと駆り立てたのでしょう。しかし、懸念材料も残っています。使い道が定まっていない「その他」に分類される住宅は4万4300件と過去最高を更新しました。これらは将来的に「特定空き家」へと転落するリスクを秘めた、いわば予備軍なのです。
民泊バブルの光と影、そして譲渡という選択肢
2018年の民泊解禁も、空き家活用の救世主として期待を集めました。札幌市は全国の市区町村で2番目に民泊登録数が多い都市であり、古い物件をリノベーションして宿泊施設へ転用する動きが加速しています。しかし、民泊大手のTAKE・武山真路会長は、宿泊専用の新築物件が増えることで、既存の空き家活用が阻害される可能性を危惧しています。新しくて綺麗な物件に人気が集中する中、いかに古い空き家の魅力を引き出すかが今後の鍵となるでしょう。
こうした中、中小企業診断士の中村領氏が運営する「みんなの0円物件」のような、無償譲渡のマッチングサービスが注目されています。解体費用に数百万円かけるくらいなら、無料で譲りたいというニーズは意外にも多いのです。空き家問題は、もはや社会全体の問題であり、個人の意識改革が求められています。札幌市の補助金制度なども活用しながら、愛着のある建物を「地域の負の遺産」にしないための積極的な出口戦略を、今こそ検討すべき時期だと言えます。
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