2019年10月の台風19号が各地に甚大な爪痕を残してから、約1ヶ月という月日が流れました。特に浸水被害を受けた地域では、生活の足である自動車を失った方々が非常に多く、切実な問題となっています。長野県上田市を中心に新車・中古車販売を展開するフジカーランド上田の羽田憲史社長に、現在の販売現場で起きているリアルな変化についてお話を伺いました。
羽田社長によれば、被災直後は混乱が続いていたものの、2019年11月に入ってようやく具体的な商談が動き出しているそうです。冠水被害や飛来物による破損、板金修理の依頼が相次ぐ中、車の買い替えを希望する相談が20件ほど寄せられ、そのうち約半数が成約に至りました。これは保険金の支払額が確定し、ようやく家計の目処が立ち始めた現れと言えるでしょう。
一方で、被災された方々からは「20万円から30万円ほどの手頃な価格で、とにかくすぐに乗れる車が欲しい」という切実なニーズも多く寄せられています。しかし、こうした低価格帯の車両は通常オークションに回されることが多く、店頭在庫が不足していたために全ての要望に応えられなかったという課題も浮き彫りになりました。
中古車市場の高騰と消費増税の影響
2019年10月の販売状況は、台風の直撃だけでなく、10月1日の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動も重なり、厳しい数字となりました。通常であれば、この時期の中古車相場は落ち着きを見せる傾向にあります。しかし、仕入れ担当者の分析によれば、現在は全国的に高値での引き合いが続いており、安易な値下がりは期待できない状況です。
オークションとは、全国の中古車販売店が車両を売買する競り市のことで、需要が供給を上回れば当然価格は上昇します。羽田社長は、この高値傾向が2019年末まで続く可能性を指摘しており、中古車を検討している方は、市場の動きを注視する必要があるでしょう。販売現場に本格的な変化が表れるのは、まさにこれからだと言えそうです。
地域に寄り添うトータルカーサービスの形
こうした厳しい環境下でも、フジカーランド上田は攻めの姿勢を崩していません。2019年11月2日には佐久店を拡張して普通車の取り扱いを開始し、さらに11月16日には新拠点「フジカーランドワン」をオープンさせました。この新店舗は、若い女性をターゲットに据え、ウッドデッキを備えたお洒落なカフェのような空間を演出するなど、従来の車屋のイメージを一新しています。
同社の最大の強みは、販売から整備、板金、保険、買い取りまでを一貫して手がける「トータルカーサービス」にあります。これは、車に詳しくない高齢者の方や女性にとって、非常に心強い存在となるはずです。特に被災時は手続きや修理が煩雑になるため、窓口が一本化されている安心感は、地域住民にとって何物にも代えがたい価値となるに違いありません。
昨今ではカーシェアリングなどの「所有しない」選択肢も注目されていますが、羽田社長は地方ならではの視点を忘れません。日常の移動に車が欠かせない地方都市では、都会と同じモデルは通用しないでしょう。シーンに合わせて服を着替えるように、多様なニーズに応える「地方版シェアリング」の可能性を模索するその姿勢に、地域と共に歩む企業の覚悟を感じます。
SNS上では、被災地での中古車不足や価格高騰を心配する声が上がっています。しかし、地元の信頼できるプロに相談することで、最適な解決策が見つかることも多いはずです。羽田社長が率いる同社の取り組みは、被災地の復興を力強く後押ししてくれることでしょう。
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