金融庁から「資産形成には不向きである」と厳しい指摘を受け、一時は市場での存在感が大きく低下していた「毎月分配型ファンド」に、今、静かな変化が起きています。かつては投資信託の主役として君臨しながらも、顧客本位ではないという批判を浴びて残高を半分近くまで減らしたこの商品に、再び資金が流入し始めているのです。
2019年に入り、公的年金に対する将来的な不安から、若年層の間では資産形成ブームが巻き起こっています。そうした中で、なぜ批判の対象となった毎月分配型が息を吹き返したのでしょうか。「業績に苦しむ銀行や証券会社が強引に売り捌いている」と考えるのは早計です。現場からは、顧客側にこそ強い需要があるという本音の声が漏れ聞こえてきます。
止まらぬ資金流入が物語る切実な現金ニーズ
「毎月分配型ファンド」とは、運用の成果を毎月決まった時期に投資家へ分配する投資信託のことです。2015年5月には約43兆円という莫大な残高を誇っていましたが、金融庁の批判を受けて2019年現在では20兆円台前半まで縮小しました。しかし、24カ月も続いた資金流出は、2019年5月から5カ月連続で流入超に転じています。
SNS上では「元本を削って分配金を出すのはタコ足配当だ」という厳しい声が上がる一方で、「公的年金だけでは毎月の生活費が足りないから、補填として助かっている」という高齢世代の切実な投稿も見受けられます。理屈による合理的な資産形成だけでは語れない、毎月現金が手元に届くという「安心感」を求める投資家層が確実に存在しているのでしょう。
超高齢社会・日本が抱える資産運用の矛盾
現在の投資信託市場のメイン顧客は、資産の7割以上を握る60代以上の高齢層です。彼らが求めるのは、何十年も先の利益よりも、今現在の定期的な現金収入です。最近では基準価格を維持しつつ、年金支給のない奇数月にのみ分配を厚くするような、より生活に密着した安定運用型のファンドが支持を集める傾向にあります。
世間で話題の「つみたてNISA」は、2018年1月の開始から2019年6月までの累計買い付け額が約1780億円と、まだ規模としては発展途上です。長期投資を掲げる新しい制度が根付くには長い年月を要します。その間にも、今を生きる高齢者の方々は「資産を守りながら、賢く取り崩す」という現実的な課題に直面し続けているのです。
編集部が考える「投資の多様性」の重要性
過去に一部の金融機関が行った過剰な分配金競争や、手数料稼ぎのための新商品乱発は、確かに猛省すべき点でしょう。しかし、一律に「毎月分配型は悪」と決めつけるのは、多様なニーズを切り捨てることになりかねません。過剰なバッシングが、かえって個人の投資意欲を削ぎ、市場全体の活力を奪ってしまうという副作用を懸念せずにはいられません。
投資は自己責任ですが、それは同時に「自分のライフスタイルに合った商品を選ぶ権利」でもあります。毎月分配型への回帰は、超高齢化社会という日本の避けて通れない現実を突きつけています。供給側の理論ではなく、投資家一人ひとりの人生に寄り添った誠実な運用が、今こそ資本市場には求められているのではないでしょうか。
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