タッチパネル業界の雄として知られるNISSHAが、大きな経営の舵を切りました。同社は2019年12月2日、中国のガラス加工大手であるレンズ・テクノロジーとの合弁事業を解消することを公式に発表したのです。世界を舞台に戦う製造業の厳しさが浮き彫りとなった形ですが、このニュースは投資家や業界関係者の間でも大きな話題を呼んでいます。
合弁会社はもともと、爆発的な需要が見込まれたスマートフォン向けのタッチパネルを効率的に生産・販売するために、2017年に中国の湖南省で産声を上げました。しかし、蓋を開けてみると当初想定していたほどの生産量を確保できず、苦戦を強いられていたのが実情です。これに伴い、NISSHAは2019年12月期に約15億円の特別損失を計上する見通しを明らかにしました。
特別損失とは、企業の通常の営業活動とは無関係に、その期だけに例外的に発生した損失を指す会計用語です。今回のケースでは、事業の撤退や株式の譲渡によって発生する「痛み」を、将来へのツケにせず今のうちに処理してしまおうという経営判断が透けて見えます。SNS上では「決断が早い」「スマホ一本足打法の怖さが出た」といった、現実を冷静に捉える声が目立っています。
今回の苦境の背景には、米アップル社をはじめとするスマートフォン主要メーカーの需要低迷が影を落としています。かつての右肩上がりの成長に陰りが見え、最新デバイスの普及ペースが鈍化したことで、新設工場の稼働率が上がらないというジレンマに陥ったのでしょう。しかし、NISSHAは決して後ろ向きな理由だけで撤退を選んだわけではないようです。
同社は兵庫県にある姫路工場など、国内にある3か所の生産拠点を強化することで、十分な供給能力を維持できると確信しています。あえてリスクの大きな海外拠点に固執せず、自社の強みを活かせる国内回帰を選ぶ姿勢からは、職人気質な日本のモノづくりの矜持が感じられます。不透明な国際情勢を鑑みれば、この選択は非常に賢明なものと言えるのではないでしょうか。
NISSHAは現在、特定のIT機器向けへの依存を脱却し、より安定した収益が見込める医療機器や車載向けパネルといった新規事業の育成に力を注いでいます。一時的な損失は避けられませんが、これは「選択と集中」を断行し、次の時代で勝ち残るための必要なステップだと私は考えます。痛みを伴う改革の先にこそ、真のV字回復が待っているはずです。
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